基準がよく分からなかった。
普通の店で変造カードなど打たせたらキィー!キィー!言い続ける。
しかしスネ夫の店なら普通に打てる。
安全だと知っていれば変身はしないのである。
心配だったのでサンゾクで一日打たせてみたが問題はない。
リュウとも気があった。
不安ではあったが二人に任せるしかない…
打ち込む金額が二百万円に届かなくても構わない事にして任せた。
集金は毎日妄爺が来る。
なぜかハツコは妄爺に恋をする…
妄爺は後に言った。
「あいつキグルイだ!!」
知らんがな…
静◯へ連れて行く打ち子は簡単に見つかった。
サンゾクの前回の失敗組四人である。
失敗しても日当を払っていたので、直ぐに集まった。
ここにもう一人…
歯抜けの下で働いていた、ツルッパゲのツルッパが加わった。
ツルッパ達が脅かしてやっていた店が、カード会社に目を付けられて、打ち込める金額が下がっていた。
店側に金額を下げてくれないなら「警察を呼ぶ」と言われた歯抜けは、ツルッパをクビにした。
店側も見た目の怖いツルッパを嫌がっていたからである。
突然シノギの無くなったツルッパは、干からびた。
僕によく電話を掛けて来て聞いて来る
「やりやすい店無い?」
教えてやるのだが、ツルッパは少しやると怖がった。
バレて逃げる際に、一度ナイフを振るっている。
出しただけ…
相手が逃げた。
それでもツルッパは、僕にとって、どこか憎めない男だった。
剃りたくも無い頭を剃らされて、見た目だけを怖くさせられたツルッパは、普通の世界に居れば、ただの気の弱いアンチャンだっただろう。
土建屋の面接のつもりで訪れた所が、◯クザ事務所だった。
ただそれだけの男である。
ツルッパの組は、月に五万円を納めれば、案外自由であった。
こうしてサンゾクの事は不安だったが、六人で静◯行きを決定した。
静◯へ向けて出発の日、東京には珍しい大雪が降った。
二台の車に分乗して静◯へ向かう。
走り始めてすぐに、打ち子四人が乗った車が、ガードレールに激突して事故った…
何してんねん…
思えばこれが、波乱の幕開けだったのかもしれない。
誰にも怪我は無い。
新しい車を用意したり、タイヤチェーンを探したりして、この日は一日が終わった。
次の日、仕切り直して出発した。
積もった雪の為、結構な時間が掛かったが、昼過ぎには目的地に着いた。
最初の一軒目は、愛◯県寄りのホールである。
名前を【海賊】とする。
これ以上書くと、必ずホールの場所が特定されてしまうようなヘンピな場所に、そのホールはあった。
ホールの大きさは普通な感じである。
駐車場の広さに驚いた。
平らな土地に、軽く200台は停められそうである。
駐車場の広さよりも驚いた事がある。
その広い駐車場に、ポツンと1台の軽トラックしか停まっていない…
ん? 休みか?
聞いてないぞ…
恐る恐るホールの中を覗く。
絶対百姓だ!と思わせる高齢のお客さんが五人ばかりいた…
マジでか?
不安がよぎる。
ホールの外に立って周りを見渡せば、タンボの中心に居るような錯覚を起こす。
タンボの中心で何かを叫びそうになる…
愛か?
いや…
帰りたーーい!!
である。
打ち子は案外ノンキにしてた。
「こりゃ楽だな」とか言っている。
アホか!
楽なもんか!
警察でも来ようもんならドコ逃げる!
走っても走ってもタンボやんけ!
興奮を押さえ、ホールの目の前にポツンと1軒だけある喫茶店に、打ち子を待たせる。
「絶対に変造カードの話しとか喫茶店でするなよ」
そう言っておいた。
まずは喫茶店を潰す訳には行かないからである。
ご飯も食べられなくなる…
携帯で海賊に電話して、到着した事を伝える。
事務所に通され、店長以下、全ての店員に挨拶された…
全部で五人…
妙に歓迎されてる雰囲気だ…
僕… 何しに来たんだっけ?
店長と二人になって話しを聞いた。
僕達は、この店にとって本物の救世主であった。
なぜなら本来この店は、先月に閉店するはずだったそうな…
店長による、悲しい物語りが始まった。
知らんがな!
ふざけんなよ!!
途中で店長の話しを遮った。
黙っていれば、永遠と喋り倒すのである。
オーナーへの愚痴に始まり、店舗の立地条件、バイトの移籍問題、地主との確執、自分達の雇用条件。
更には、お向かいさんの喫茶店の飼い犬が「すぐ噛みつく」まで言いだした。
全く僕ら関係ないし…
要約すると、本来無くなる筈だったお店が、僕らが玉抜きをする事で、また何年か持ち直すと言う。
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