組織犯罪の始まり26

基準がよく分からなかった。

普通の店で変造カードなど打たせたらキィー!キィー!言い続ける。

しかしスネ夫の店なら普通に打てる。

安全だと知っていれば変身はしないのである。

心配だったのでサンゾクで一日打たせてみたが問題はない。

リュウとも気があった。

不安ではあったが二人に任せるしかない…

打ち込む金額が二百万円に届かなくても構わない事にして任せた。

集金は毎日妄爺が来る。

なぜかハツコは妄爺に恋をする…

妄爺は後に言った。

「あいつキグルイだ!!」

知らんがな…

静◯へ連れて行く打ち子は簡単に見つかった。

サンゾクの前回の失敗組四人である。

失敗しても日当を払っていたので、直ぐに集まった。

ここにもう一人…

歯抜けの下で働いていた、ツルッパゲのツルッパが加わった。

ツルッパ達が脅かしてやっていた店が、カード会社に目を付けられて、打ち込める金額が下がっていた。

店側に金額を下げてくれないなら「警察を呼ぶ」と言われた歯抜けは、ツルッパをクビにした。

店側も見た目の怖いツルッパを嫌がっていたからである。

突然シノギの無くなったツルッパは、干からびた。

僕によく電話を掛けて来て聞いて来る

「やりやすい店無い?」

教えてやるのだが、ツルッパは少しやると怖がった。

バレて逃げる際に、一度ナイフを振るっている。

出しただけ…

相手が逃げた。

それでもツルッパは、僕にとって、どこか憎めない男だった。

剃りたくも無い頭を剃らされて、見た目だけを怖くさせられたツルッパは、普通の世界に居れば、ただの気の弱いアンチャンだっただろう。

土建屋の面接のつもりで訪れた所が、◯クザ事務所だった。

ただそれだけの男である。

ツルッパの組は、月に五万円を納めれば、案外自由であった。

こうしてサンゾクの事は不安だったが、六人で静◯行きを決定した。

静◯へ向けて出発の日、東京には珍しい大雪が降った。

二台の車に分乗して静◯へ向かう。

走り始めてすぐに、打ち子四人が乗った車が、ガードレールに激突して事故った…

何してんねん…

思えばこれが、波乱の幕開けだったのかもしれない。

誰にも怪我は無い。

新しい車を用意したり、タイヤチェーンを探したりして、この日は一日が終わった。

次の日、仕切り直して出発した。

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積もった雪の為、結構な時間が掛かったが、昼過ぎには目的地に着いた。

最初の一軒目は、愛◯県寄りのホールである。

名前を【海賊】とする。

これ以上書くと、必ずホールの場所が特定されてしまうようなヘンピな場所に、そのホールはあった。

ホールの大きさは普通な感じである。

駐車場の広さに驚いた。

平らな土地に、軽く200台は停められそうである。

駐車場の広さよりも驚いた事がある。

その広い駐車場に、ポツンと1台の軽トラックしか停まっていない…

ん? 休みか?

聞いてないぞ…

恐る恐るホールの中を覗く。

絶対百姓だ!と思わせる高齢のお客さんが五人ばかりいた…

マジでか?

不安がよぎる。

ホールの外に立って周りを見渡せば、タンボの中心に居るような錯覚を起こす。

タンボの中心で何かを叫びそうになる…

愛か?

いや…

帰りたーーい!!

である。

打ち子は案外ノンキにしてた。

「こりゃ楽だな」とか言っている。

アホか!

楽なもんか!

警察でも来ようもんならドコ逃げる!

走っても走ってもタンボやんけ!

興奮を押さえ、ホールの目の前にポツンと1軒だけある喫茶店に、打ち子を待たせる。

「絶対に変造カードの話しとか喫茶店でするなよ」

そう言っておいた。

まずは喫茶店を潰す訳には行かないからである。

ご飯も食べられなくなる…

携帯で海賊に電話して、到着した事を伝える。

事務所に通され、店長以下、全ての店員に挨拶された…

全部で五人…

妙に歓迎されてる雰囲気だ…

僕… 何しに来たんだっけ?

店長と二人になって話しを聞いた。

僕達は、この店にとって本物の救世主であった。

なぜなら本来この店は、先月に閉店するはずだったそうな…

店長による、悲しい物語りが始まった。

知らんがな!

ふざけんなよ!!

途中で店長の話しを遮った。

黙っていれば、永遠と喋り倒すのである。

オーナーへの愚痴に始まり、店舗の立地条件、バイトの移籍問題、地主との確執、自分達の雇用条件。

更には、お向かいさんの喫茶店の飼い犬が「すぐ噛みつく」まで言いだした。

全く僕ら関係ないし…

要約すると、本来無くなる筈だったお店が、僕らが玉抜きをする事で、また何年か持ち直すと言う。

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