しかしこの時は三軒だと僕は思い込んだ。
歯抜けのコトなど頭から消し飛んだ。
「歯抜けさんに言わないで出来る?」
ためらいは一切無い。
妄爺にこの話しをすると「それはヤバイ。知れたら歯抜けって人も本気になるぞ」と心配した。
「お前は◯クザを舐めすぎている」とも言った。
シカトした。
あんな間抜けに気づかれる訳が無いと思った。
バレた場合の事は怖いので考えないようにした。
どうにかなるさといつも思っていた。
結局、歯抜けに、バレはしなかった。
やっぱりアイツは只の、間抜けな歯抜けだった。
その後、歯抜けは、変造カードの終わりと共に、イケナイ、ブツの売り買いに手を出した。
僕の周りにはその頃沢山の人がいる事を知っていた歯抜けは、よく電話をして来た。
「イケナイ、ブツのバイ、ニン、やる奴いないか?」
「ゴト師しかいない」
それが僕の、いつもの答えであった。
少しすると歯抜けはキロ単位のイケナイ、ブツを持っていて逮捕された。
自分でもイケナイ、ブツを喰っていた。
何年刑期を食らったのかを僕は知らない。
全く興味がない事だった。
歯抜け編 完!
あれ?
僕は社長に言った。
「僕はあの人の舎弟でもなんでも無いから問題無いです。ただ、バレたら喧嘩になるから社長が言わないなら出来ます」
社長は安心した様だった。
すかさず僕は言った。
「社長のせいでバレたら、社長に無理矢理頼まれたって言いますけど…」
「言わないよ。言う訳ないだろ!」
社長はまた少し青くなった。
この日、相手先のホールの概要を聞いて、社長の取り分も決めた。
言いづらそうにしている社長にストレートに聞いた。
「いくら欲しいんですか?」
いくらと言っただろうか…
覚えていない。
結局、一円も払わなかったからである。
三軒のホールの場所を聞いて戸惑った。
二軒が静◯。
後の一軒が名◯屋である。
そこで困ったのがサンゾクをどうするかである。
ハーネスの取り付けは当然のように延期した。
少し冷静に考えれば、ショボイ儲けで、全てをパーにしている場合では無い。
それよりもサンゾクの管理であった。
僕には信用出来る人間がいなかった。
少し信用出来ると言えば、婆さんファミリーとリュウぐらいである。
しかしこの四人は、プッツン二人に、少し頭のイカレた女…
更には正体の知れない〇国人である。
絶望を感じた…
体が二つ必要だった。
新しい三軒には僕が行かない訳には行かなかった。
この三軒は、一人のオーナーによる経営である。
いきなり三軒同時に打ち込みを開始するのでは無く、まずは一軒で様子を見たいと言っている。
ここにプッツンファミリーを送り込んでも、カタコトの〇国人を送り込んでも話しが、なんのこっちゃ? になってしまう。
諦めた…
サンゾクを半分諦めた…
このおかしな四人を使い回す事しか出来なかった。
潰れるなら、先の短いサンゾクだと判断した。
更に、ここに芋屋も加わった。
お金の面で信用出来るのは妄爺しかいなかった。
例え妄爺に何かされたとしても問題は全く無い。
僕の稼ぎの半分は、妄爺の物だと思っていた。
しかし妄爺はなかなか うん とは言わない…
「芋のかき入れ時だ」と言う。
頭に残った髪の毛、ムシってやろうかと思った…
しつこく頼み込んで集金だけはしてくれる事になった。
だが妄爺は、この時、自分の問題を抱えていた。
僕は自分の事しか見えず、何も気付かなかった。
妄爺の憂鬱をよそに僕は走り続けていた。
僕がいない間の、何人かへのカードの受け渡しは、婆さんと良夫ちゃんにまかせた。
また二人にカード代を100円下げさせられた…
娘のハツコはリュウと組ませる事にした。
リュウを捕まらせる訳にはいかない。
人質がいなくなるし、雪ちゃんも悲しむ…
問題はハツコがヒステリーな事である。
変なプレッシャーをハツコに掛けると完全なプッツンに変身する…
どこから出すのか分からないのだが キィー!と言う奇声を突然発する。
普段は普通である。
怒ったり、怒らせたり、プレッシャーを掛けたりしなければ大丈夫なのだが…
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