組織犯罪の始まり24

あまり深く考えると、怖くなるからである。

僕は小池に負けない怖がりであった。

僕がやろうと思った方法は単純である。

リュウはテレビと同じ方法が良いと言う。

通路の両端に、一人づつ見張りを立たせ、取り付ける台の開けた扉が見えないように、更に二人パチンコ台の横に立たせる。

その際に、もう一人が、ホールの反対側で騒ぎを起こして店員の目を引き付ける。

慎重な集団だと更にいくつかの対策をする。

ウザイよ…人多いし…

最低、6人も必要であった。

「それが一番安全だヨ」

そうリュウが言う。 

お断りです!分け前が減ります!

小池は今回、鍵を開けるだけである。

「取り分15%ね」

そう言うと渋々頷いた。

浮いた15%をリュウに渡す約束で頼んだ。

「僕の言う通りにしてくれ」

決行の日は近い。

取り付ける物が裏ロムじゃ無いのが気掛かりであった。

そんな時、サンゾクの社長から昼ご飯の誘いを受けた。

この日はファミレスでは無く、社長の行きつけだと言う寿司屋に連れて行かれた。

のちに思えば接待の積もりだったのか?

僕、生物何一つ食べられませんけど…

その寿司屋の個室である。

社長の愚痴から、話しは始まった。

「またカード会社が言って来たんだよね…」

前回の注意から10日ほど過ぎた時期であったろうか…

ウザイから「平気、平気~」とまた言いくるめた。

実は全然平気ではない事を、この時の僕は知っていた。

雪ちゃんの周りに居る、パチンコ店と話しを付けてやっていた人や、打ち子で入っていた仲間が捕まった人達に、話しを聞いていたからである。

いろいろ聞いてサンゾクはヤバいと思っていた。

しかしこの段階でヤバイのは社長だけであって、打ち子や僕には関係無い。

カード会社の注意を無視し続けると、4、5回目には、注意から警告に変わる。

警告に変わった段階で、サンゾクは先行き大損害をくらう事が決定的になる。

カード会社に契約を切られるからである。

契約が切られれば、CRのパチンコ台のカード用サンドが使えなくなる。

この他にもいくつも規制が入る。

新しく現金用のサンドを取り付けるだけで、僕達と組んで儲けたアガリは消し飛ぶだろう。

しかしすぐでは無い。

しばらくはカード会社に泳がされる。

この当時カード会社は忙し過ぎた。


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被害が多過ぎて対応が追い付かない。

更に警告だけを続ける。

契約を打ち切る事は決定しながらも。

その内警察へ被害届けを出す。

ここで初めて僕達がヤバくなる。

ホール側を捕まえる為には僕達もセットで捕まえなければ証拠として弱い。

警察の内偵が入るまでには、三ヶ月と僕は予想していた。

内偵が入ってから捕まえるまでには更に三ヶ月と妄爺は言った。

警察の内偵は時間が掛かると言う。

さすがに元ヤクザらしい理屈を言っていた。

しかし僕は、内偵が入った段階でヤバイような気がしていた。

三ヶ月でやめようと思った。

「ホントに平気かな?」と言う社長に「六ヶ月はドコも見逃してるみたいですよ。五ヶ月ぐらいでやめましょうか?」と言った。

「そうだね」

そう言った社長が馬鹿に見える。

心の痛みは何一つ感じなかった。

「話し違うんだけど… 歯抜けさんに内緒にしてくれる?」

別に歯抜けには義理はない。

どちらかと言うとただの鴨である。

打ち込む金額が二百万円に上がっても、歯抜けの取り分は余り増やしていない。

文句が出たらやめるだけである。

僕は全てが適当だった…

「良いですよ」

そう僕は言った。

それでも社長は少し戸惑っているように見えた。

なんだろ?

お金になる事か?

損する事なら歯抜けに喋りますけど…

あなたとの約束は守りません…

黙って僕はオイナリさんをツマみながら待った。

覚悟を決めたのか社長が話し出す。

「実は知り合いのパチンコ屋でも、私の所と同じ事がしたいって言ってるんだよね」

来たっ! また鴨や!

僕は毎月いくら稼げるんだと思うと、オイナリさんが喉につかえた。

ちなみにお寿司屋さんではいつもオイナリさんだ…

無い店はタマゴだ…

社長が言うには、それが一軒では無いと言う。

三軒だ!

ふるえた…

歓喜にふるえた…

結果を先に言おう。

出来たお店は一軒だった。

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