組織犯罪の始まり22

ボサッとしていれば喰われて終わる。

そんな世界である。

しかし僕は、くだらないゴマカしはしなかった。

いや、少しはした!

みんなするんだって…

僕は小池に更に条件を突き付けた。

「打ち子の取り分40%ね」

「えー!マジっすか!」

焦る小池…

小池の取り分が、30%しか残らない。

しかしこれは当然だった。

僕の取り分では無い。

実際に、打ち子に払う物である。

この当時、裏ロムの打ち子は、換金した金額の3分の1が取り分だと、なんとなく決まっていた。

それに大当たりを引くまでに使うお金や、交通費を合わせると40%ぐらいになる。

小池にそう説明した。

「結構儲かりませんね」

少し泣きそうである。

僕も同感だった。

例えば、裏ロムを仕掛けて、一日、十万円出すとする。

僕が三万、小池が三万、打ち子が四万である。

はっきり言って僕にはショボイとしか思えなかった。

どうでも良かったのである。

だから交渉は、自分の都合だけで進めた。

「まだ条件あるよ」

僕は小池に、そう言った。

小池は、絶望的な顔をする。

笑えた。

「お金じゃないよ。裏ロムのセットの仕方は教えないよって事」

そう笑いながら僕は言った。

「え? なんでですか?」

お前が信用出来ないからだ…

既にお前は犯罪者なんだ…

自分で気づいているのか?

僕は、お前のように間抜けでも、お人よしでもない…

黙って喰われる訳にはいかない…

全ての想いを飲み込んで小池に言った。

「打ち子はこっちで入れるんだから知る必要ないだろ?」

小池は少し考える顔をして言った。

「え~ 自分が勝手に打ち子入れるって事ですか?」

「違うよ。変な泥棒が入った場合、小池君を疑いたくないからだよ」

僕の言い分を聞いた時の、小池の残念そうな顔は、油断出来ない事を物語っているようだった。

僕は余り人を信用しなくなっていた。

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とりあえずの話しは付いた。

しかしここまでは絵に描いた餅である。

まだ喰えない。

ここでネックになるのは小池の班長と言う低い役職だった。

サンゾクの班長と言う役職は、バイトの教育と管理だけの物である。

機械的な事は主任と店長がやる。

ホールが営業中の場合は、小池もパチンコ台の修理をする程度である。

この事は「裏ロムって手に入ります?」と小池に初めて聞かれた時に、聞いていた。

リュウから裏ロムの取り付け方を聞いた時、小池じゃ無理だなと思った。

取り付けに時間が掛かり過ぎるのである。

練習しても一台に10分は掛かるとリュウは言う。しかし方法はある。

封印を構わず破ってカバーを外す方法である。

そしてロムを取り替える。

練習すれば1、2分で出来る。

その後にコチラの用意した封印を隙を見てユックリ貼る。

お客さんが少ないとはいえこれを営業中のホールでやる。

他の店員が後ろを通るだけでバレるだろう。

小池に出来るのか?

「出来そう?」

「怖いですね~」

少し考えた小池は更に言う。

「練習すれば出来るかもしれません」

コイツには無理だと思った。

悪い事をするくせに怖いの危険のを先に口にする奴は、土壇場で必ず手が縮む。

…コイツは仲間じゃない。

捕まっても構わないと思った。

「分かった。じゃあ、2、3日後に練習してみよ。パチンコ台と裏ロム用意するから」

「分かりました。よろしくお願いします!」

そう小池は言った。

このお話しに何度か登場している【ハーネス】と言うのを覚えているだろうか?

呼び名はいくつかあって【ぶら下がり】等とも呼ばれていた。

形状は機種によって違うが、基本は15本程の配線の束である。

配線の束の両端に差し込み口が付いている。

長さが15センチ。

幅が5センチ。

厚みは配線の太さの二倍程である。

取り付け方はいたって簡単で、時間にすると1分掛からない。

取り付けるパチンコ台の方にも、着脱可能な同じ形の配線が付いている。

そのパチンコ台の配線をハズし、コチラのハーネスを取り付けるだけである。

セット方法は裏ロムと余り違いがない。

しかし初期の頃のハーネスは単発、確変を選べなかった。

裏ロムとの決定的な違いは、基板のカバーの外側に取り付けると言う事である。

封印は関係なくなる。

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