今回の助かりに味をしめた二人は、捕まった時の言い逃れをマニュアル化させた。
馬鹿の一つ覚えである。
そのマニュアルを、ゴトに向かう車の中でよく練習していた。
聞いていると漫才である。
僕に聞かせた後に聞いて来る。
「これなら平気でしょ?」
危ねえな~と思ったが答えた。
「うん、お母さんがいれば大丈夫だよ」
婆さんは、あなたが捕まった時も助けてあげるからと言ってニコニコ笑った。
結構です!
この後マニュアルは良夫ちゃんの為に二回使われた。
どちらも呆気なく釈放になった。
とんでもない婆である。
それに比べ、二人の子供はどこかが変であった。
いや…全員か?
サンゾクでの打ち込みを始めて、ひと月目に、最初のカード会社からの注意があった。
「あなたのお店で変造、偽造カードが使われている疑いがあります。注意して下さい」
社長に対してである。
ふ~んと思った。
この当時、僕たちと同じようにホールと話しを付け、玉抜きをしていて捕まる店が何件か出ていた。
それはどれも、営業時間外にもっと大量の玉抜きをしている店である。
営業中の玉抜きをしていて捕まる店は、まだ数少なかったとように思う。
そのような情報は、テレビと雪ちゃんからもたらされていた。
雪ちゃんの変造カード工場では、どれぐらい打ち込むと店が捕まるかを、ある程度分かっている。
捕まった人達にも、変造カードを売っているので知っていて当然である。
普通はカードが売れなくなるので、教えてはくれなかったが、僕には教えてくれた。
この時よりリュウは、打ち子から人質に降格した。
サンゾクの社長は変造カードで店の立て直しをはかろうと思っている。
三ヶ月はやりたいと言う。
「三ヶ月なら全然平気ですよ」
僕は適当に答えた。
店の事など知った事ではない。
大事なのは打ち子とお金だけである。
「ホントに平気?」と聞かれれば「平気、平気~」と答える。
しかし、平気の後ろに【僕はね】が付く。
でもそれは言わない。
安全の中にいて、お金にしようとするなど甘い。
僕達は、いつも震えている。
ドジればお前達に、地べたに正座させられるんだ…
それでも許される事なく警察に突き出される。
僕はパチンコ業界の全てが敵だと思っていた。
当然この時も、社長を騙して続行に決定した。
夕方サンゾクの駐車場で寝ている時だった。
車の窓をノックされて目が覚める。
なんだと思い外を見ると、そこにはウンコが立っていた。
ちがう…
小池だ!
起こすな、ウンコマン…
窓を開けると、◯クザモンが目上の者にするような挨拶をされた。
「お疲れ様ですっ!」
そう言うのウザイんですけど…
「やめなよ、みっともないから…」
ウンコを見る目で言った。
スイマセン!と言った態度も、ヤ◯ザモンの真似である。
馬鹿ほっとこと思い聞いた。
「なんでござりますか?」
「アハハ 面白いっすね~」
そう言って小池は笑う。
リュウよりウザそうだ…
てか、僕の事、馬鹿にしてないか?
どっか行けよと思うが仕方ない、話しを聞いた。
パチンコ屋の駐車場ではまずいので、少し離れたファミレスへ向かう。
車の中ではずっと、おだてられ続けた。
なんか好きには、なれないタイプであった。
見た目はビビるの大〇に似てる… 知らんか?
喋る事もないので黙っていると小池は自分から切り出した。
「あの~ 変造カードって売って貰えないですか?」
きた! 鴨や!
しかしコイツ捕まったら喋りそうだな…
はした金で捕まりたくはない。
しかし鴨…
でもやめよ…
「最近危ないからやめた方が良いよ」
適当な事を言ってみた。
すると小池は、自分はやらないで変造カードを売ると言う。
欲しがってる奴が10人は軽くいると言う。
初の大口取引!
でもコイツ…
この前、僕を捕まえようとしてた癖に…
納得はいかないが、お客さんである。
その上、相場を知らないだろうと思ってニヤケていた。
「一枚三千円ね!」
普通の倍を言ってみた。
ぐへへ
「え~ 打ち子さんに1500円て聞きましたよ~」
そう言われてガックリする僕…
同時に打ち子に怒りを覚える。
仕方なく小池はやらない事を条件に、1500円で一日100枚売る事に決定した。
何もしないで一日十万円を越す儲けを得る事になった。
更に小池は言う。
「裏ロムって手に入ります?」
ん?
裏ロム…?
エロビデ?
なんだっけ?
ど忘れした。
「ん?えーと…」
「え!知らないんですか?」
少し小馬鹿にした目で小池は言った。
「うへへ…」
笑ってごまかす僕がいた…
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