組織犯罪の始まり19

今回の助かりに味をしめた二人は、捕まった時の言い逃れをマニュアル化させた。

馬鹿の一つ覚えである。

そのマニュアルを、ゴトに向かう車の中でよく練習していた。

聞いていると漫才である。

僕に聞かせた後に聞いて来る。

「これなら平気でしょ?」

危ねえな~と思ったが答えた。

「うん、お母さんがいれば大丈夫だよ」

婆さんは、あなたが捕まった時も助けてあげるからと言ってニコニコ笑った。

結構です!

この後マニュアルは良夫ちゃんの為に二回使われた。

どちらも呆気なく釈放になった。

とんでもない婆である。

それに比べ、二人の子供はどこかが変であった。

いや…全員か?

サンゾクでの打ち込みを始めて、ひと月目に、最初のカード会社からの注意があった。

「あなたのお店で変造、偽造カードが使われている疑いがあります。注意して下さい」

社長に対してである。

ふ~んと思った。

この当時、僕たちと同じようにホールと話しを付け、玉抜きをしていて捕まる店が何件か出ていた。

それはどれも、営業時間外にもっと大量の玉抜きをしている店である。

営業中の玉抜きをしていて捕まる店は、まだ数少なかったとように思う。

そのような情報は、テレビと雪ちゃんからもたらされていた。

雪ちゃんの変造カード工場では、どれぐらい打ち込むと店が捕まるかを、ある程度分かっている。

捕まった人達にも、変造カードを売っているので知っていて当然である。

普通はカードが売れなくなるので、教えてはくれなかったが、僕には教えてくれた。

この時よりリュウは、打ち子から人質に降格した。

サンゾクの社長は変造カードで店の立て直しをはかろうと思っている。

三ヶ月はやりたいと言う。

「三ヶ月なら全然平気ですよ」

僕は適当に答えた。

店の事など知った事ではない。

大事なのは打ち子とお金だけである。

「ホントに平気?」と聞かれれば「平気、平気~」と答える。

しかし、平気の後ろに【僕はね】が付く。

でもそれは言わない。

安全の中にいて、お金にしようとするなど甘い。

僕達は、いつも震えている。

ドジればお前達に、地べたに正座させられるんだ…

それでも許される事なく警察に突き出される。

僕はパチンコ業界の全てが敵だと思っていた。

当然この時も、社長を騙して続行に決定した。

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夕方サンゾクの駐車場で寝ている時だった。

車の窓をノックされて目が覚める。

なんだと思い外を見ると、そこにはウンコが立っていた。

ちがう…

小池だ!

起こすな、ウンコマン…

窓を開けると、◯クザモンが目上の者にするような挨拶をされた。

「お疲れ様ですっ!」

そう言うのウザイんですけど…

「やめなよ、みっともないから…」

ウンコを見る目で言った。

スイマセン!と言った態度も、ヤ◯ザモンの真似である。

馬鹿ほっとこと思い聞いた。

「なんでござりますか?」

「アハハ 面白いっすね~」

そう言って小池は笑う。

リュウよりウザそうだ…

てか、僕の事、馬鹿にしてないか?

どっか行けよと思うが仕方ない、話しを聞いた。

パチンコ屋の駐車場ではまずいので、少し離れたファミレスへ向かう。

車の中ではずっと、おだてられ続けた。

なんか好きには、なれないタイプであった。

見た目はビビるの大〇に似てる… 知らんか?

喋る事もないので黙っていると小池は自分から切り出した。

「あの~ 変造カードって売って貰えないですか?」

きた! 鴨や!

しかしコイツ捕まったら喋りそうだな…

はした金で捕まりたくはない。

しかし鴨…

でもやめよ…

「最近危ないからやめた方が良いよ」

適当な事を言ってみた。

すると小池は、自分はやらないで変造カードを売ると言う。

欲しがってる奴が10人は軽くいると言う。

初の大口取引!

でもコイツ…

この前、僕を捕まえようとしてた癖に…

納得はいかないが、お客さんである。

その上、相場を知らないだろうと思ってニヤケていた。

「一枚三千円ね!」

普通の倍を言ってみた。

ぐへへ

「え~ 打ち子さんに1500円て聞きましたよ~」

そう言われてガックリする僕…

同時に打ち子に怒りを覚える。

仕方なく小池はやらない事を条件に、1500円で一日100枚売る事に決定した。

何もしないで一日十万円を越す儲けを得る事になった。

更に小池は言う。

「裏ロムって手に入ります?」

ん?

裏ロム…?

エロビデ? 

なんだっけ?

ど忘れした。

「ん?えーと…」

「え!知らないんですか?」

少し小馬鹿にした目で小池は言った。

「うへへ…」

笑ってごまかす僕がいた…

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