そこまで聞いた段階で、こりゃ無理だな…助けるの…
そう思った。
「それは間違いなく捕まってるよ…」
「やっぱりそう?」
悲しそうである。
婆さんが捕まった場合の助かり方はいくつか教えてあった。
しかし今回は良夫ちゃんである。
あんたら無茶苦茶し過ぎなんだよ…
そうは思うが、どうにかならないかと考えた。
「パトカー来てる?」
「来てません」
パトカー来る前だったら、僕が事務所まで行って話しをすれば助けられるかも…
なぜか根拠の無い自信はいつもあった。
アホである。
「パトカー来る前だったら、僕が事務所に行って話してみるよ。でもそっちに着いた時、パトカー来てたら諦めてよ…」
「はい 分かりました」
婆さんは、小さく返事をした。
「お母さんもバレてるかもしれないから、店に近づいちゃ駄目だよ。あと2、30分で着くから」
それだけ言って電話を切った。
リュウが助手席から聞いて来る。
「助けるのか!?」
少し嬉しそうである。
だまれ…お前に構ってる場合じゃない…
リュウも既に婆さん達とは仲良くなっていた。
最初に婆さんを見た時はビックリして、凄いねー凄いねー、ばかり言っていた。
〇国は年寄りを大事にする国らしく、婆さんにはいつも優しく接していた。
そのわりには年寄りの家に泥棒に入ったりする。
意味のわからん、変な奴らである。
助けるのは意外と簡単に思えた。
どうなろうが僕は捕まらないのだから…
脅すか、した手にでるかだけを間違えなければ、イケるだろうと思った。
出たトコ勝負だ!
少し自分に酔っていた。
パチンコホールに着く10分ぐらい前に婆さんに電話をした。
パトカーが来ているかの確認の為である。
電話にはハツコが出た。
「パトカー来てる?」
「まだ来てない」
間に合う!
そう思った。
「あと10分で着くよ 待ってて」
そう言って電話を切ろうとすると、ハツコが言った。
「お母さん、パチンコ屋行きました」
「・・・・・・」
クソ婆ー!
また言う事聞かねー!
「ダメだって言ったんだけどな!」
強くハツコに言っていた。
この時僕は、まだハツコがどんな性格かをよく知らなかった。
「だって~」
スネた感じの後、泣きそうな感じで、ごめんなさいと彼女は謝った。
「戻ったら車から出さないで!」
「はい!!!」
鼓膜を突き破りそうなドデカイ返事である…
なんだコイツ??
変なの??
そう思いながら電話を切った。
パチンコホールに着いて、辺りを見回すがパトカーは来ていないようだった。
婆さん達の車に向かう。
ドアを開けたらハツコだけしか乗っていない。
「お母さんは?」
「知らないっ!!!」
キレ気味に言われてソッポを向かれた。
なんだ?
少しおかしいのかなと思った。
この状況で知らないは有り得ない…
そんなに怒らせる事は言っていない…
強く言ったとは言え、先程のセリフだけである。
しかし今は、それどころではない。
優しく聞いた。
「ごめん、ごめん、お母さんどこかな?」
するとトンチンカンな答えが返る。
「なんで私の事怒るの~!」
お前、状況が見えないのか?
ただなんとなく、おかしい奴のニオいがした。
ここは下手だと決めて出来るだけ優しく聞いた。
「怒ってないよ ごめんよ… でも良夫ちゃん捕まってるんだから、教えてよ。お母さんどこ?」
「事務所!」
え?
捕まった?
「捕まったの?」
「自分で行った!」
なんで…
あのクソ婆!!
余計な事しやがって!
婆が行って、何が出来る!!
考えがまとまらなくなった…
このホールに着くまでに、考えて来た方法が、全て頭から消し飛んだ…
事務所へ突っ込んでいいのかが、分からなくなった。
僕がこれから事務所に行く事で、更に悪くなる可能性を考えた。
何も分からなかった…
ただ時間だけが過ぎていった。
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