組織犯罪の始まり17

そこまで聞いた段階で、こりゃ無理だな…助けるの…

そう思った。

「それは間違いなく捕まってるよ…」

「やっぱりそう?」

悲しそうである。

婆さんが捕まった場合の助かり方はいくつか教えてあった。

しかし今回は良夫ちゃんである。

あんたら無茶苦茶し過ぎなんだよ…

そうは思うが、どうにかならないかと考えた。

「パトカー来てる?」

「来てません」

パトカー来る前だったら、僕が事務所まで行って話しをすれば助けられるかも…

なぜか根拠の無い自信はいつもあった。

アホである。

「パトカー来る前だったら、僕が事務所に行って話してみるよ。でもそっちに着いた時、パトカー来てたら諦めてよ…」

「はい 分かりました」

婆さんは、小さく返事をした。

「お母さんもバレてるかもしれないから、店に近づいちゃ駄目だよ。あと2、30分で着くから」

それだけ言って電話を切った。

リュウが助手席から聞いて来る。

「助けるのか!?」

少し嬉しそうである。

だまれ…お前に構ってる場合じゃない…

リュウも既に婆さん達とは仲良くなっていた。

最初に婆さんを見た時はビックリして、凄いねー凄いねー、ばかり言っていた。

〇国は年寄りを大事にする国らしく、婆さんにはいつも優しく接していた。

そのわりには年寄りの家に泥棒に入ったりする。

意味のわからん、変な奴らである。

助けるのは意外と簡単に思えた。

どうなろうが僕は捕まらないのだから…

脅すか、した手にでるかだけを間違えなければ、イケるだろうと思った。

出たトコ勝負だ!

少し自分に酔っていた。

パチンコホールに着く10分ぐらい前に婆さんに電話をした。

パトカーが来ているかの確認の為である。

電話にはハツコが出た。

「パトカー来てる?」

「まだ来てない」

間に合う!

そう思った。

「あと10分で着くよ 待ってて」

そう言って電話を切ろうとすると、ハツコが言った。

「お母さん、パチンコ屋行きました」


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「・・・・・・」 

クソ婆ー!

また言う事聞かねー!

「ダメだって言ったんだけどな!」

強くハツコに言っていた。

この時僕は、まだハツコがどんな性格かをよく知らなかった。

「だって~」

スネた感じの後、泣きそうな感じで、ごめんなさいと彼女は謝った。

「戻ったら車から出さないで!」

「はい!!!」

鼓膜を突き破りそうなドデカイ返事である…

なんだコイツ??

変なの??

そう思いながら電話を切った。

パチンコホールに着いて、辺りを見回すがパトカーは来ていないようだった。

婆さん達の車に向かう。

ドアを開けたらハツコだけしか乗っていない。

「お母さんは?」

「知らないっ!!!」

キレ気味に言われてソッポを向かれた。

なんだ?

少しおかしいのかなと思った。

この状況で知らないは有り得ない…

そんなに怒らせる事は言っていない…

強く言ったとは言え、先程のセリフだけである。

しかし今は、それどころではない。

優しく聞いた。

「ごめん、ごめん、お母さんどこかな?」

するとトンチンカンな答えが返る。

「なんで私の事怒るの~!」

お前、状況が見えないのか?

ただなんとなく、おかしい奴のニオいがした。

ここは下手だと決めて出来るだけ優しく聞いた。

「怒ってないよ ごめんよ… でも良夫ちゃん捕まってるんだから、教えてよ。お母さんどこ?」 

「事務所!」

え?

捕まった?

「捕まったの?」

「自分で行った!」

なんで…

あのクソ婆!!

余計な事しやがって!

婆が行って、何が出来る!!

考えがまとまらなくなった…

このホールに着くまでに、考えて来た方法が、全て頭から消し飛んだ…

事務所へ突っ込んでいいのかが、分からなくなった。

僕がこれから事務所に行く事で、更に悪くなる可能性を考えた。

何も分からなかった…

ただ時間だけが過ぎていった。

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