ファミレスに着くと打ち子達も小池は危ないと言う。
「後で言っとくよ。他に問題は?」
「無い。楽だ」
皆が声をそろえる。
全員からアガリの集金をした。
八十万円近くあったと思う…
(100万円分の変造カードを玉抜きも混ぜて使い切ると、換金時の平均が80万円ぐらいになったように記憶する。お金でやっていれば、20万円負ける計算である)
その中から一人に食事代と交通費込みで55000円渡した。
残りのお金から歯抜けの取り分とカードの代金を引く。
僕の手元には三十万円あっただろうか?
全く思い出せない…
しかし僕の月の取り分は一千万円を軽く越える事になる。
この先を見ればそれは間違い無い事である。
この日、夜遅く、みんなで食事をしている時にサンゾクの社長に連絡をした。
「うちの方も問題無いからこのまま続けてくれ」
偉そうに言われた。
初日が無事に終了した。
次の日小池とゴト前に少し話しをした。
「なんか小池くん凄いんだって?打ち子がみんなブルッてるよ。慣れるまでイジメないでやってよ」
小池は得意そうな顔をした。
「すいません… でもあれぐらい大丈夫なんですよ~ うちの客アホばっかりですから」
そう言って笑う。
「でも店長と決めた事だし、守らないと話し自体が壊れるかもしれないだろ?」
「あの店長根性無いからな~ じゃあ少し大人しくやりますよ」
少し上から目線で小池は言った。
なんかカチンと来る奴だな…
まあ良いかと思いながら僕は言った。
「そうしてよ。なるべく長くやりたいし。打ち込む金額が上がったら小池君達に渡せる金額も増えるしね」
「ホントですか~ 頼みますよ~」
言い方が気に入らない。
イジメたくなった。
ファミレスの席を立ちながら僕は言った。
「あ~ それと一つだけ言っとくけどブロックするのはやめてね。あれはゴト師の中では、怖がりがやる事だって笑われる事だから。捕まる奴は大体あれやるんだよ」
小池の顔を見るとうろたえている。
なんだ…
やっぱり意気がっただけのヘッポコか…
少しスッキリ出来た事に満足して店を出た。
五日も経つと昼、夜、両方の店員達とも息が合って来た。
危険らしい危険も無いまま二週間ほどが過ぎた。
*
サンゾクの駐車場で横になって、みんなの終わりを待っていると、サンゾクの社長から電話が来た。
「いま駐車場にいるよね?」
「はい…」
「これから飯行けない?」
「一時間ぐらいなら…」
お金の話しかなと思いながら約束した。
社長と二人で会うのはこれが初めてである。
ホールから離れたファミレスで社長に会った。
「君達大分儲かってるよねぇ。うちはあんまり変わらないよ。少し客が増えた感じぐらいだよ」
そう、つまらなそうに社長は言った。
あんな閑古鳥が鳴いてる店、少し増えれば充分でしょ、と思った。
「僕の方もあんまり良くないですよ。歯抜けさんにガッツリ持ってかれるから」
そう適当に答えた。
「ん? 君は歯抜けさんのトコの組の人じゃないの?」
あんなポンコツと一緒にされた…
コイツ!
それだけは許さん!!
元々僕はパチンコ屋の社長など敵だと思っている。
お金になるから付き合っているだけである。
お前、そのうちギャフンと言わしてやるからな、ぐらいな考えであった。
「冗談やめて下さいよ。僕ヤクザに見えますか?」
「いや 全然見えないから変だなと思ってたよ」
「でしょ。歯抜けさんとは知り合ってそんなに経ってないです。今回たまたま頼まれて来ただけなんです」
「そうなのか、そうなのか!」
社長は、なぜか喜んだ。
ん?
なんだ?
僕を、なめたのか?
ポンコツとは違う方法で怖がらせるぞ…
そう思った。
この後、雑談を挟んで社長が言った。
「打ち込む金額二百万にしたいんだけど、どう? これは歯抜けさんに言った方が良いの?」
一瞬歯抜けには言わないで僕の儲けにしよっかなと思ったが、どうせ歯抜けには、少ししか、やらないんだから良いかと思いなおした。
「どっちでも同じだけど、一応社長の方からも言っといて下さいよ」
そう言った時、ポンコツ消えろ!と思ったのは言うまでもない。
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