組織犯罪の始まり10

「いらない!」と言うのに、帰りにお土産だと言って、鹿の角だの、誰かのキ◯タマなどの漢方薬を持たされた。

精力が付くらしい…

その紙袋を車の助手席に置いて、神◯川県のパチンコ屋【サンゾク】の社長に、店員の事がどうなったのかを確認する為、電話を掛けた。

歯抜けに脅されたのが相当こたえたのか、僕の提案に近い形で出来る事になった。

僕の提案はズバリ店員を抱き込んだ営業中の玉抜きである。

玉抜きは一応はパチンコを打ちながら、変造カードを玉に変える作業である。

大当たりを引いていないのに出玉が貯まる。

話しの付いていないホールでやる場合は、まず周りのお客さんに疑われる場合が多い。

あんまり箱を積むと疑われるので、2、3箱貸玉を貯めると、自分で計量機にコソコソ流しにいかなければいけない。

自分で何度も計量機に流しに行くと、今度は店員に疑われる。

そこで、僕達がお客さんにバレないように抜いた玉を、店員がコッソリ運んでレシートに変えてくれるのであれば、問題は全て解決する。

その為には、話しの付いた店員を一つの列に固定させて、僕達専用に近い状態を作るのが理想である。

その提案が通った。

担当する店員も決まったと言う。

やる気なら一日何百万円でも抜ける。

時間も短縮出来る。

店側としてもゴト師に朝から晩まで居座られないで済む。

僕達としても一人一日二十万円分のカードで、普通に打つのが大変だと思っていたので助かった。

後は、カード会社の様子を見て、打ち込む金額を上げて行ければ完璧である。

これはもうパチンコでは無かった。

玉抜きマシーンである。

必ず成功すると思った。

そして第二弾の当日を迎えた。

第二弾当日の朝、リュウを迎えに行った。

【サンゾク】へ行く通り道ではあったがダルい。

運転手にされた気分にもなる。

マンション前には、朝から綺麗な雪ちゃんと、黒い長髪を薄い茶色の短髪に変えたリュウが待っていた。

雪ちゃんが少し話しがあると言って車に乗り込んだ。

リュウはチャッカリ助手席である…

お前…

後ろ行けや…

雪ちゃんが今日使う変造カードの束を僕に渡しながら言う。

「あなたはカード安く買ってるからサービスが余り出来ないアルヨ。 でも私がノッけてる100円はいらないよ。だからリュウをお願いね」


スポンサーリンク

最後は必ず笑顔である。 

朝からラブラブですね…

金額下げないで良いよと言ったが、かたくなにそうしてくれと言う。

お金が僕に向かい、流れ始めていた。

サンゾクの最寄りの駅から、一つ手前の駅のファミレスに朝8時に全員集合した。

歯抜けは前回で懲りたのか顔も出さない。

僕に喰われ過ぎて儲けも薄い。

この先、歯抜けがサンゾクを訪れる事は二度と無かった。

ファミレスに着くと打ち子四人と二人のお客さんがいた。

お客さんとは、話しの付いた店員の事である。

サンゾクは、昼と夜の二交替制であった。

昼の担当をする店員に見覚えがある。

前回の時に僕を睨み、あいつもやってましたよ!と言った店員である。

更に、僕が、事務所からホールに向かう邪魔をして、どけ!こら!と突き飛ばした店員でもある。

名前は【小池】

班長だと言った。

もう一人は、どこかオドオドしているが店長であった。

この他に、昼間の主任と夜の班長もコチラ側の味方である。

席に座る時、右手を上げて小池に言った。
「よっ!この前ごめんよ」

「いえ!こちらこそすいませんでした!」

緊張を顔に浮かべて小池は謝る。

なんでお前が謝るの?社長にいくらコヅカイ貰うんだ?と思った。

挨拶を軽くして、すぐに玉抜きの細かい作戦を決めた。

結果、人気の無い二つの列を使い、一人が十万円分玉抜きをして、残りの十万円は普通に打つ事に決まった。

店長の考えを多く取り入れた形である。

少しダルイな~とは思ったが、慣れるまではこれで良いかと思い決定した。

状況により、やり方を変える事には、お互いが賛成した。

別れしなに小池だけに話し掛けた。

「小池くん。社長にコヅカイいくら貰うのよ?」

「少しですよ~」

小池は少し、卑屈に笑った。

コメント