「いらない!」と言うのに、帰りにお土産だと言って、鹿の角だの、誰かのキ◯タマなどの漢方薬を持たされた。
精力が付くらしい…
その紙袋を車の助手席に置いて、神◯川県のパチンコ屋【サンゾク】の社長に、店員の事がどうなったのかを確認する為、電話を掛けた。
歯抜けに脅されたのが相当こたえたのか、僕の提案に近い形で出来る事になった。
僕の提案はズバリ店員を抱き込んだ営業中の玉抜きである。
玉抜きは一応はパチンコを打ちながら、変造カードを玉に変える作業である。
大当たりを引いていないのに出玉が貯まる。
話しの付いていないホールでやる場合は、まず周りのお客さんに疑われる場合が多い。
あんまり箱を積むと疑われるので、2、3箱貸玉を貯めると、自分で計量機にコソコソ流しにいかなければいけない。
自分で何度も計量機に流しに行くと、今度は店員に疑われる。
そこで、僕達がお客さんにバレないように抜いた玉を、店員がコッソリ運んでレシートに変えてくれるのであれば、問題は全て解決する。
その為には、話しの付いた店員を一つの列に固定させて、僕達専用に近い状態を作るのが理想である。
その提案が通った。
担当する店員も決まったと言う。
やる気なら一日何百万円でも抜ける。
時間も短縮出来る。
店側としてもゴト師に朝から晩まで居座られないで済む。
僕達としても一人一日二十万円分のカードで、普通に打つのが大変だと思っていたので助かった。
後は、カード会社の様子を見て、打ち込む金額を上げて行ければ完璧である。
これはもうパチンコでは無かった。
玉抜きマシーンである。
必ず成功すると思った。
そして第二弾の当日を迎えた。
第二弾当日の朝、リュウを迎えに行った。
【サンゾク】へ行く通り道ではあったがダルい。
運転手にされた気分にもなる。
マンション前には、朝から綺麗な雪ちゃんと、黒い長髪を薄い茶色の短髪に変えたリュウが待っていた。
雪ちゃんが少し話しがあると言って車に乗り込んだ。
リュウはチャッカリ助手席である…
お前…
後ろ行けや…
雪ちゃんが今日使う変造カードの束を僕に渡しながら言う。
「あなたはカード安く買ってるからサービスが余り出来ないアルヨ。 でも私がノッけてる100円はいらないよ。だからリュウをお願いね」
最後は必ず笑顔である。
朝からラブラブですね…
金額下げないで良いよと言ったが、かたくなにそうしてくれと言う。
お金が僕に向かい、流れ始めていた。
サンゾクの最寄りの駅から、一つ手前の駅のファミレスに朝8時に全員集合した。
歯抜けは前回で懲りたのか顔も出さない。
僕に喰われ過ぎて儲けも薄い。
この先、歯抜けがサンゾクを訪れる事は二度と無かった。
ファミレスに着くと打ち子四人と二人のお客さんがいた。
お客さんとは、話しの付いた店員の事である。
サンゾクは、昼と夜の二交替制であった。
昼の担当をする店員に見覚えがある。
前回の時に僕を睨み、あいつもやってましたよ!と言った店員である。
更に、僕が、事務所からホールに向かう邪魔をして、どけ!こら!と突き飛ばした店員でもある。
名前は【小池】
班長だと言った。
もう一人は、どこかオドオドしているが店長であった。
この他に、昼間の主任と夜の班長もコチラ側の味方である。
席に座る時、右手を上げて小池に言った。
「よっ!この前ごめんよ」
「いえ!こちらこそすいませんでした!」
緊張を顔に浮かべて小池は謝る。
なんでお前が謝るの?社長にいくらコヅカイ貰うんだ?と思った。
挨拶を軽くして、すぐに玉抜きの細かい作戦を決めた。
結果、人気の無い二つの列を使い、一人が十万円分玉抜きをして、残りの十万円は普通に打つ事に決まった。
店長の考えを多く取り入れた形である。
少しダルイな~とは思ったが、慣れるまではこれで良いかと思い決定した。
状況により、やり方を変える事には、お互いが賛成した。
別れしなに小池だけに話し掛けた。
「小池くん。社長にコヅカイいくら貰うのよ?」
「少しですよ~」
小池は少し、卑屈に笑った。
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