「ホントだよ。取り付けちゃえば誰でも簡単に当たりは引けるよ。問題はどうやって取り付けるかだよ」
二つの道具を見て僕は、凄いな~ としか思わなかった。
配線のハーネスだけは今度の店で使えるかな、と少し思った…
しかし、まだまだ変造カードの威力の方が、安全で上だと思った。
リュウも同じ事を言った。
「今はカードの方が安全にお金になるヨ。カードが終わったらコッチもあるから教えておくんだヨ」
なんかキモいな…
「それはどうもかたじけ無い、有り難き幸せでゴザル」
先程のショックを振り払う為に、ふざけて言った。
笑いながらリュウが言う。
「俺の事を使ってくれないカ?」
また、なんか気持ち悪い事言いだしたな…
帰りたいよ…
「俺は、いろんなゴト道具を作る工場の人と友達なんダ。だから日本人が買う値段よりも大概安く入るアルヨ。この電波の奴は日本人なら80万から200万で買ってる。俺は50万ぐらいだ。ハーネスは日本人で2万から7万ぐらい。俺は5千円から2万ぐらいなんだ。それに、知らないグループが作ったゴト道具でも、すぐコピーしちゃうから、なんでも安く入るよ。まだまだゴト道具もいっぱいあるし、今度見せるアルヨ」
この時僕は へ~ ぐらいにしか思わなかった。
その価値が分からなかった。
リュウに好かれた事が少し気持ち悪かった。
雪ちゃんのヒモだし…
この後、リュウが持ち込むゴト道具はどんな物でも誰よりも安かった。
その上情報も早くホールに知られていない段階のゴト道具が多かった。
それなのに僕はへ~だった。
「へ~だったらその道具売り歩けばお金になるだろ。打ち子なんかしないでも食って行けるだろ」
疑問に思った事を聞いた。
「ダメなんダ…」
リュウはゲンナリした顔をした。
「なにが?」
「雪のヤキモキが凄いんだ!」
「なんて?」
そしてリュウは語りだした。
雪ちゃんのヤキモチが凄いと言う。
嫉妬だけでは無く、危ない事をするのも禁止されている。
捕まってリュウだけが強制送還される事を雪ちゃんが嫌うらしい。
雪ちゃんは偽装結婚をしていたのでビザがある。
リュウは街を一人で歩く事も禁止されていた。
警察に職務質問されて捕まるからである。
ゴト道具を売る客も雪ちゃんが捜していた。
だからゴト道具を買う人も少ないと言う。
俺はビザが切れてからほとんど一人では外に出てないんダ…」
「マジで… そんなに雪ちゃんうるさいの?」
リュウは悲しい顔で答える。
「彼女は俺の事、愛してるんダ…」
ぶん殴ろうかと思った。
辛うじて我慢した。
さらりと愛してるなどと言うコイツが更に気持ち悪くなった。
「へ~!」
「だからピッキングのやり方を教えて一人十万円貰ってるんダ。俺は先生なんダ」
この野郎ー!許せん奴だ!
「へ~!!」
「だから、お前達と一緒にゴトをした時は楽しかっタ!」
「へ~!!!」
「だから俺を使ってくれないカ?」
打ち子も断ろうと決めた。
全てが気にいらん!
バタン!と言う音と共に雪ちゃんが部屋から出て来た。
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見れば見る程、綺麗であった。
「私の事、なんか言ってるアルナ?」
リュウは慌てた。
「違うよ!仕事一緒にやろって頼んでたんダヨ。彼のトコなら良いって言ってたでしヨ?」
雪ちゃんは、日本人と一緒で安全が確保されていれば良いと言う。
ましてやリュウが何と言ったのかは知らないが、僕がリュウを危険から助けたと思っている。
「あなたのトコなら平気だね。リュウをお願いね。私が出来る事はなんでも協力するアルネ」
そう言って雪ちゃんは可愛く笑った。
「まかせといて!」
そう、元気良く答えた自分を、嫌悪した…
リュウは喜んだ。
良いんだよ…
お前は、喜ばないで…
「もう少ししたら外国人登録書の偽造した奴が手に入るから、多少危なくても大丈夫だヨ。ビザが切れるまではいろいろやってたシ」
それを聞いた雪ちゃんは「だめアルヨ! 私怒ると怖いの忘れたか!」とリュウを怒鳴り「 お金要らないから彼には危ない事させないでネ」と僕には可愛く言った。
ラブラブなのね…
僕は言った。
「今度の打ち子なら安全だから平気だよ」
するとリュウが言う。
「打ち子だけじゃないヨ。この先ずっとだヨ。僕達相棒だヨ!」
そう言って笑った…
それは断る!と言いたかった…
しかし雪ちゃんが見ている…
仕方なく僕は言った。
「そうなの…?」
リュウは何を勘違いしたのか嬉しそうに「そうだヨ! 俺達相棒だヨ!」と笑い続けた…
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