組織犯罪の始まり9

「ホントだよ。取り付けちゃえば誰でも簡単に当たりは引けるよ。問題はどうやって取り付けるかだよ」

二つの道具を見て僕は、凄いな~ としか思わなかった。

配線のハーネスだけは今度の店で使えるかな、と少し思った…

しかし、まだまだ変造カードの威力の方が、安全で上だと思った。

リュウも同じ事を言った。

「今はカードの方が安全にお金になるヨ。カードが終わったらコッチもあるから教えておくんだヨ」

なんかキモいな…

「それはどうもかたじけ無い、有り難き幸せでゴザル」

先程のショックを振り払う為に、ふざけて言った。

笑いながらリュウが言う。

「俺の事を使ってくれないカ?」

また、なんか気持ち悪い事言いだしたな…

帰りたいよ…

「俺は、いろんなゴト道具を作る工場の人と友達なんダ。だから日本人が買う値段よりも大概安く入るアルヨ。この電波の奴は日本人なら80万から200万で買ってる。俺は50万ぐらいだ。ハーネスは日本人で2万から7万ぐらい。俺は5千円から2万ぐらいなんだ。それに、知らないグループが作ったゴト道具でも、すぐコピーしちゃうから、なんでも安く入るよ。まだまだゴト道具もいっぱいあるし、今度見せるアルヨ」

この時僕は へ~ ぐらいにしか思わなかった。

その価値が分からなかった。

リュウに好かれた事が少し気持ち悪かった。

雪ちゃんのヒモだし…

この後、リュウが持ち込むゴト道具はどんな物でも誰よりも安かった。

その上情報も早くホールに知られていない段階のゴト道具が多かった。

それなのに僕はへ~だった。

「へ~だったらその道具売り歩けばお金になるだろ。打ち子なんかしないでも食って行けるだろ」

疑問に思った事を聞いた。

「ダメなんダ…」

リュウはゲンナリした顔をした。

「なにが?」

「雪のヤキモキが凄いんだ!」

「なんて?」

そしてリュウは語りだした。

雪ちゃんのヤキモチが凄いと言う。

嫉妬だけでは無く、危ない事をするのも禁止されている。

捕まってリュウだけが強制送還される事を雪ちゃんが嫌うらしい。

雪ちゃんは偽装結婚をしていたのでビザがある。

リュウは街を一人で歩く事も禁止されていた。

警察に職務質問されて捕まるからである。

ゴト道具を売る客も雪ちゃんが捜していた。

だからゴト道具を買う人も少ないと言う。

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俺はビザが切れてからほとんど一人では外に出てないんダ…」

「マジで… そんなに雪ちゃんうるさいの?」

リュウは悲しい顔で答える。

「彼女は俺の事、愛してるんダ…」

ぶん殴ろうかと思った。

辛うじて我慢した。

さらりと愛してるなどと言うコイツが更に気持ち悪くなった。

「へ~!」

「だからピッキングのやり方を教えて一人十万円貰ってるんダ。俺は先生なんダ」

この野郎ー!許せん奴だ!

「へ~!!」

「だから、お前達と一緒にゴトをした時は楽しかっタ!」

「へ~!!!」

「だから俺を使ってくれないカ?」

打ち子も断ろうと決めた。

全てが気にいらん!

バタン!と言う音と共に雪ちゃんが部屋から出て来た。

おー 〇ャイニーズビューティー

見れば見る程、綺麗であった。 

「私の事、なんか言ってるアルナ?」

リュウは慌てた。

「違うよ!仕事一緒にやろって頼んでたんダヨ。彼のトコなら良いって言ってたでしヨ?」

雪ちゃんは、日本人と一緒で安全が確保されていれば良いと言う。

ましてやリュウが何と言ったのかは知らないが、僕がリュウを危険から助けたと思っている。

「あなたのトコなら平気だね。リュウをお願いね。私が出来る事はなんでも協力するアルネ」

そう言って雪ちゃんは可愛く笑った。

「まかせといて!」

そう、元気良く答えた自分を、嫌悪した…

リュウは喜んだ。

良いんだよ…

お前は、喜ばないで…

「もう少ししたら外国人登録書の偽造した奴が手に入るから、多少危なくても大丈夫だヨ。ビザが切れるまではいろいろやってたシ」

それを聞いた雪ちゃんは「だめアルヨ! 私怒ると怖いの忘れたか!」とリュウを怒鳴り「 お金要らないから彼には危ない事させないでネ」と僕には可愛く言った。

ラブラブなのね…

僕は言った。

「今度の打ち子なら安全だから平気だよ」

するとリュウが言う。

「打ち子だけじゃないヨ。この先ずっとだヨ。僕達相棒だヨ!」

そう言って笑った…  

それは断る!と言いたかった…

しかし雪ちゃんが見ている…

仕方なく僕は言った。

「そうなの…?」

リュウは何を勘違いしたのか嬉しそうに「そうだヨ! 俺達相棒だヨ!」と笑い続けた…

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