組織犯罪の始まり6

話しが付いてる店で、自分が悪くも無いのに捕まりそうになった。

ましてや変造カードを押し付けられて、逃げろとまで言われているのである。

感謝など有り得なかった。

僕なら、話しが違うと怒る…

気持ち悪いぐらいの感謝にたじろいだ。

僕の無事まで喜んでいる。

コイツ…

ホモか?

不安がよぎる…

この時の意味不明の感謝も、後にチャンスを広げる事になった。

歯抜けとツルッパは別の席に座らせて、他の打ち子達に捕まった経緯を話した。

当然のように、歯抜けを悪者にした。

細かい話しをしても仕方がないので、話しを少し変えて言った。

「あの歯の抜けたポンコツ◯クザが、ドジッて、コイツにだけは見つかっちゃ行けないって店員に見つかったんだ…」

「それでカメラで全員捜されて捕まった。話しも上手く付いてなかった。すまん…」

みんな内心は知らないが怒ってはいなかった。

自分達が、打ち子が出来なくなる事を残念がっている。

確かに、この店がもう一度出来るとしても、彼らは無理であろう。

悪いねと謝るしか出来なかった。

みんなが歯抜けの方を見る。

苺ショートケーキを頬張る歯抜け…

歯が無いから硬い物がダメなんだね?

ポンコツ野郎!

「それで… 今日の日当だけど… 1人、十万払うから…」

涙をこらえて言った。

僕はまだまだ甘ちゃんだった…

更には、細かい計算がダルかった。 

「そんなに良いよ」

皆、口々に言う。

「え?良いの?じゃあ1万で…」

そう言ったら結局十万円づつ取られた…

人間なんて、こんなもんだ…

カッコつけると貧乏になる事を学んだ。

レベルアップである。

しかしその、いやしい奴らの中に、お金いらない!と言う、光りを放つ天使のような男がいた!

良夫ちゃん…

な訳ない!

しっかり取られた十万円…

そう!

〇国人の、リュウであった!

お前、完全に頭虫わいてる…

「良いから取っとけよ…」

そう、いくら言っても受け取らない。

つい…

お前の国貧しいんだろ?と言いそうになった…

ダメだろ…

余りにもかたくなに拒むから、お金を受け取った周りの奴らは、恥ずかしくなり始めた。

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みんなが必死に言い出した。

「受け取れ、受け取れ!」と…

いや…

返せよお前ら…

仕方なさそうにリュウはお金を受け取った。

僕の期待は、もろくも崩れ去った。

更にリュウは、僕にとってショックな事を口走った。

「だったらせめて食事をご馳走したいアルヨ。今度僕の家に食べに来たら良いヨ」

やだよ、気持ち悪い…

そして言ったのである。

「雪に作らせるから。雪は、料理、上手アルヨ」

「ん?え?雪?は?」

「一緒に暮らしてるんだ」

トドメを刺された。

金も取られてプチ失恋もした。

そんな一日であった…

いや! まだだ!

この悔しさを社長にぶつけようと決めた僕だった。

ツルッパには陰で五万円渡した。

歯抜けに今日も安く使われる話しになっていたから充分である。 

節約しないと…

「歯抜けに言うなよ、取られるぞ」

かわいそうになるぐらいツルッパは喜んでいた。

同じゴト師で、この稼ぎの違いが憐れになる。

歯抜けには…

ファミレスの伝票をソッと手渡した。

また連絡するよと言って、みんなと別れ、歯抜けと二人になった。

社長との待ち合わせの時間である。

待ち合わせ場所に着く間に、今日のホールをどうする積もりか聞いた。

「絶対もう一回話し付けるぞ!」

何が絶対だよ…

ポンコツのくせにと思ったが、一応僕の希望を言った。

「どうせ今日、ほとんどの店員にバレたんだから、店員も巻き込んだ話しにしてくださいよ」

「そうだな… そうじゃなきゃ危なくて打ってられねえな。あいつら今日も朝から見回り方がキツかったからなー」

そう歯抜けは言った。

は?

楽だったけど?

何言ってんだと思った。

しかしそれで全てが納得出来た。

歯抜けは、怖くなって、店員に自分から挨拶したのである。

◯クザと分からせれば、捕まらないと思ったのであろう。

ゴトの世界は、◯クザとかだけじゃ通じないよと思った。

言う訳にも行かないので、上手く話し付けて下さいとだけ言った。

まあポンコツには無理だろうから、途中で僕がでしゃばろうと思っていた。

そんな事とは気づかずに、歯抜けは気合い充分な感じで吠えた。

「まかっちょけ!!」

空気抜けとる!

ホントかね?

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