そんな自分の内情を歯抜けはすべて僕に話した。
僕を、人の良い、弱っちいガキだと思っていたからだと思う。
連れている婆さんと良夫ちゃんもそう思わせる一つの要素だった。
○クザに同情してやる必要など、どこにも無い。
喰える時に喰う。
喰われそうになったら、とっとと逃げる!
これ基本。
案外平気。
この時歯抜けにいくら渡す話しをしたのかが思い出せない。
五人の打ち子には一日五万円払った。
僕は何もしないで、この店だけで毎月一千万円を超えていたのは記憶している。
歯抜けは、よくボヤいていた。
「ツルッパ達の所の半額だ…」
振り返ると、自分で自分が怖くなる…
この話しをご飯を食べながら妄爺にした。
「お前… やり過ぎだ」
そう言って心配していた。
その頃から妄爺の僕に対しての過保護ぶりがひどくなる。
「相手の組はどこだ?」とか「一日二回必ず連絡入れろ」とか「なんかあったらキレ爺の組の名前を出せ」とか気味が悪いぐらいになった。
すべてシカトした。
お金を一円も受け取らない妄爺に、頼む事は何も無い。
だからと言って、○クザと揉めて勝てるとも思っていなかった。
犯罪を犯している以上、何かあっても警察には駆け込めない。
なるようになるだろ~ と僕はいつも適当に考えていた。
終わった!死んだ!と思う事は幾つもあった…
どっこい僕は、生きている…
歯抜けとの話しがまとまり、打ち子の面接をする事になった。
婆さんと良夫ちゃんにはスネ夫の店がある。
僕が行かなければ更に二人の取り分が増える。
一応聞いてみた。
「日当五万円だけど、話しの付いた安全な所でやる?」
良夫ちゃんが答えた。
「もっと下さい」
嫌だ!拒否する!拒む! 断る!
そう思ったが言いづらいのでごまかした。
「スネ夫の店、二人でやれば一日十万越えるじゃん。そっちの方が良いよ!」
良夫ちゃんはすぐに引っ掛かった。
お金が絡むと、ボケの兆候がまったく見られない婆さんは、ジトッとした目で僕を見る。
負ける訳には行かない…
コイツら二人を、今度の店に入れると、僕の取り分が減る!
目をそらしてみた…
チラッと見たら、まだ見てた…
クソババア~
少しはボケろや~
アンタらに安全なんていらないだろ~
そう思った。
それでも、やっぱり、スネ夫の店に行かないのは勿体ないと言う事になり、婆さん達のカード代を200円下げて800円にする事で話しがついた。
少し損こいた…
ちっ!
雪ちゃんが連れて来た五人と喫茶店で会った。
どの人も大人しそうに見える。
その中に一人だけ、日本人では無い人が入っている。
雪ちゃんがどうしても入れて欲しいと頼んで来た〇国の男である。
美人の頼みは断りづらい。
「見た目が大人しければ良いよ~」
鼻の下を伸ばす僕…
後で知ったが雪ちゃんの彼氏だった…
見た目は、やはり日本人と、どこか違うが問題の無い範囲だと思った。
名前が… 【リュウ】
30才ぐらいで日本語は余りうまく無かった。
聞く事は大体理解するが喋るのが下手だった。
働く条件は雪ちゃんが既に全員に伝えていた。
一日一人二十万円を打ち込んで、いくら出ようが日当五万円。
飲み食いただ。
交通費全支給。
ホールと話しが付いているとは言え、営業中に打つのだから周りのお客さんにバレないように打つ事。
お客さんにバレた場合はクビなどの条件にした。
内心は知らないが、条件には、みんな納得して来ていた。
僕も、みんなの見た目には問題無いと思ったのでこの五人に決定した。
しかし技術面で不安が残る。
話しは付いているとは言え、この五人がヘタクソ過ぎてお客さんにバレまくると、話し自体が無くなる可能性がある。
一日1人二十万円変造カードを打ち込むのも中々大変である。
普通に打てば、一日十八万円ぐらいしか使えない。
残りは玉抜きを、するしかない。
そこで初日は、僕と婆さんと良夫ちゃんとツルッパと歯抜けも混ざって10人で打つ事にした。
一人十万円なら楽勝である。
その間に五人の技術面を観察しようと決めた。
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