組織犯罪の始まり2

そんな自分の内情を歯抜けはすべて僕に話した。

僕を、人の良い、弱っちいガキだと思っていたからだと思う。

連れている婆さんと良夫ちゃんもそう思わせる一つの要素だった。 

○クザに同情してやる必要など、どこにも無い。

喰える時に喰う。

喰われそうになったら、とっとと逃げる!

これ基本。

案外平気。

この時歯抜けにいくら渡す話しをしたのかが思い出せない。

五人の打ち子には一日五万円払った。

僕は何もしないで、この店だけで毎月一千万円を超えていたのは記憶している。

歯抜けは、よくボヤいていた。

「ツルッパ達の所の半額だ…」

振り返ると、自分で自分が怖くなる…

この話しをご飯を食べながら妄爺にした。

「お前… やり過ぎだ」

そう言って心配していた。

その頃から妄爺の僕に対しての過保護ぶりがひどくなる。

「相手の組はどこだ?」とか「一日二回必ず連絡入れろ」とか「なんかあったらキレ爺の組の名前を出せ」とか気味が悪いぐらいになった。

すべてシカトした。

お金を一円も受け取らない妄爺に、頼む事は何も無い。

だからと言って、○クザと揉めて勝てるとも思っていなかった。

犯罪を犯している以上、何かあっても警察には駆け込めない。

なるようになるだろ~ と僕はいつも適当に考えていた。

終わった!死んだ!と思う事は幾つもあった…

どっこい僕は、生きている…

歯抜けとの話しがまとまり、打ち子の面接をする事になった。

婆さんと良夫ちゃんにはスネ夫の店がある。

僕が行かなければ更に二人の取り分が増える。

一応聞いてみた。

「日当五万円だけど、話しの付いた安全な所でやる?」

良夫ちゃんが答えた。

「もっと下さい」 

嫌だ!拒否する!拒む! 断る!

そう思ったが言いづらいのでごまかした。

「スネ夫の店、二人でやれば一日十万越えるじゃん。そっちの方が良いよ!」

良夫ちゃんはすぐに引っ掛かった。

お金が絡むと、ボケの兆候がまったく見られない婆さんは、ジトッとした目で僕を見る。

負ける訳には行かない…

コイツら二人を、今度の店に入れると、僕の取り分が減る!

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目をそらしてみた…

チラッと見たら、まだ見てた…

クソババア~ 

少しはボケろや~

アンタらに安全なんていらないだろ~

そう思った。

それでも、やっぱり、スネ夫の店に行かないのは勿体ないと言う事になり、婆さん達のカード代を200円下げて800円にする事で話しがついた。

少し損こいた…

ちっ!

雪ちゃんが連れて来た五人と喫茶店で会った。

どの人も大人しそうに見える。

その中に一人だけ、日本人では無い人が入っている。

雪ちゃんがどうしても入れて欲しいと頼んで来た〇国の男である。

美人の頼みは断りづらい。

「見た目が大人しければ良いよ~」

鼻の下を伸ばす僕…

後で知ったが雪ちゃんの彼氏だった…

見た目は、やはり日本人と、どこか違うが問題の無い範囲だと思った。

名前が… 【リュウ】

30才ぐらいで日本語は余りうまく無かった。

聞く事は大体理解するが喋るのが下手だった。

働く条件は雪ちゃんが既に全員に伝えていた。

一日一人二十万円を打ち込んで、いくら出ようが日当五万円。

飲み食いただ。

交通費全支給。

ホールと話しが付いているとは言え、営業中に打つのだから周りのお客さんにバレないように打つ事。

お客さんにバレた場合はクビなどの条件にした。

内心は知らないが、条件には、みんな納得して来ていた。

僕も、みんなの見た目には問題無いと思ったのでこの五人に決定した。

しかし技術面で不安が残る。

話しは付いているとは言え、この五人がヘタクソ過ぎてお客さんにバレまくると、話し自体が無くなる可能性がある。

一日1人二十万円変造カードを打ち込むのも中々大変である。

普通に打てば、一日十八万円ぐらいしか使えない。

残りは玉抜きを、するしかない。

そこで初日は、僕と婆さんと良夫ちゃんとツルッパと歯抜けも混ざって10人で打つ事にした。

一人十万円なら楽勝である。

その間に五人の技術面を観察しようと決めた。

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