僕のカードの仕入れ値は言わない。
「1200円なら売れるけど、それ以下だと僕の儲けが無いから売れないよ…」
三バカ…
喜んじゃいましたー
アホや。
歯抜けが一番上の立場で相談役と言われる55才ぐらいの愛想の良い男である。
以下【歯抜け】と呼ぶ。
お前…それは無い!と言いたくなる、ピカピカ光るスーツ?背広?のちびっ子が二番手。
スーツは光っていたが影の薄い男であった。
以下【記憶に無い奴】
そして問題のコイツ…
そう、ツルッパゲ。
体はデカくてガッチリしてる。
見るからにヤクザであった。
年は僕と同じ。
並ぶと頭一つ僕と違っている。
僕… ひ弱なんですぅ~
このツルッパゲが、ビックリするぐらいのヘッポコだった。
完全なサギである。
最初、生意気にも僕をニラみやがった。
後で聞いたら歯抜けに黙って睨んどけと言われたらしい。
歯抜け、あなどれん。
正解だよ…
怖かった。
以下、状況によりヘッポコかツルッパで。
このヘッポコ、少し前に書いたナイフ持ちである。 念のため。
三バカは全員この店でゴトをしていると言っていたがそうでは無かった。
ツルッパと他2名でやっていると歯抜けが言った。
変造カードは一日50枚、1200円に決まった。
何もしないで一日35000円ゲットした。
あいらぶ良夫ちゃん!
(この時期五千円の変造カードが主流でしたが混乱するので一万円のカードに統一して書きます。必要に応じて小額カードも書いていきます。)
カードの値段を決めた後、受け渡しをどうするか決めた。
毎日50枚づつ渡したりするのは当然だるい。
200枚づつ、僕の指定する所に取りに来て貰う事にした。
嫌なら売らないよとカードの力で威張る僕。
この時僕は、まだツルッパが根性無しだとは気づいていなかった。
逆にヤバイぐらいに思っていた。
歯抜けが言うには、ツルッパが変造カードのまとめ役をやっていて、自分達は、お金の集金だけをしているらしい。
じっくり聞くと、随分ひどいシステムであった。
歯抜けはツルッパと他2名に、1500円で買っていた50枚のカードを渡し、必ず三十五万円になるように打たせていた。
この店で五十万円分のカードを、パチンコを打たずに玉抜きだけすると、換金率の問題で四十万円の現金になる。
しかし、全て玉抜きでカードを使い切るのは当然無理なので、朝から晩まで三人にパチンコを普通に打たせる。
カードが余りそうだと玉抜きをさせる。
最後に換金した金額が三十五万円を越えた分がツルッパ他2名の取り分である。
換金した金額が、三十五万円に届かない分は、ツルッパ他2名が罰金として払う。
奴隷だ…
ツルッパ奴隷や!
だからハゲちゃったんだ!!
聞いた時そう思った。
後でツルッパに聞いたら、ほぼ自分達は、お金になっていないと言って泣いた。
泣いたと言うのは文字通り泣いたのである。
デカイ体でオヨヨと泣くツルッパは…
笑えた。
罰金制度も考えると、確かに、一日一万円になれば良い方だろう。
その一万円も、他2名の自分より若い十代の組員にツルッパは渡していた。
全員は、食えないのである。
ツルッパとは年も同じで、カードの受け渡しもツルッパだったので仲良くなった。
彼はよく泣く男だった。
それにしても、一つの店で五十万円分の変造カードを毎日使うのは、まずくないのかと思った。
「店を脅かしてる…」
そうツルッパは言った。
それがたまらなく嫌だとも言った。
脅かすと言っても、歯抜けなり、ちびっ子が、パチンコ屋のオーナーや店長を違う側面から脅かすのでは無い。
ツルッパや、他2名が、捕まえたり警察呼んだりしたら暴れるぞ!と言うプレッシャーを店側に掛け続けるだけである。
元々歯抜け達も遊びに来ていた店なので、全員がヤクザだと言う事は店側も知っている。
最初の頃は店側と揉める事もあったが、その度に他2名が暴れる。
ツルッパは、怖いので睨んでいるだけだったらしい。
それでも店側はツルッパの睨みを恐れた。
たまに大きめのナイフをワザと見せたりしたそうである。
普通なら即座に警察を呼ばれて終わりだが、店側も自分達が損をする訳では無いので、大人しく打っているなら、ヤクザ者と揉める事を嫌い、見逃すようになった。
それでも、打ち込む金額が五十万円を越えたり、周りのお客さんにバレる派手な玉抜きをすると、店側も大人しくしていないそうである。
「だから…あの店であんまりやらないでくれる?」
ツルッパは付き合い始めてふた月後に僕に言った。
カードの受け渡しがあったので、持って行ってやるついでに、ツルッパの店で僕達はたまに打っていた。
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