おっかねぇ! 助けられない! 無理だ! 婆さんがかわいそうだ… 店員が出てから5分は起ってる… 外に居れば助けられるかも… 事務所に連れて行かれてたら乗り込む? なんて言う? どうせパチンコ屋は損しねえんだから話せば大丈夫か? 無理だろ~ なんて言う? なんて…
扉を出た。
少し離れた所で、良夫ちゃんが、二人の店員に腕を捕られて必死に抵抗していた。
普段大人しいのに必死に抵抗する良夫ちゃんを見ておかしくなった。
笑った…
笑ったら冷静になった気がした。
腹から声が出た。
「おい! てめぇら! ジジイ虐めて何してんだ!」
それだけ言って大股で三人に近づいた。
店員の一人がおびえた顔でゴチョゴチョと言い訳をした。
確かに変造カードがなんとかと言った。
聞こえない振りをして、良夫ちゃんの手を掴んで放さなかった店員の腕を掴み低く聞いた。
「なんの権利が有って掴んでんだ?!」
何故か掴んでいた手がスルリとはなれた。
良夫ちゃんと店員の間に立ち、良夫ちゃんの方を向いて言った。
「じいさん!もう帰んな!」
え?良いの?みたいな顔をした良夫ちゃんを目で脅し、顎を向こうへ行けと言うようにしゃくった。
店員の方を振り返り、もう一度怒鳴った。
「年寄りイジメてんじゃねえんだよ!おい!」
その時の二人の店員の目を見た時、僕の勝ちを確信した。
良夫ちゃんが見えなくなった頃、さらに何人かの店員が出て来たが状況がつかめない。
二人の店員にどうしたのかを聞いている。
その二人の店員にむかいまた僕は怒鳴った。
「あんまり年寄りイジメるようなマネすんなよ!」
店員達の反応など確かめず、良夫ちゃんとは逆へ僕は歩いた。
なぜか追い掛けてくる店員は居なかった。
パチンコ屋から見えなくなるまで走るのを我慢した。
店員来るなよ。店員来るなよ!と願いながら。
たとえ捕まったとしても僕は変造カードを持っていない。
いくらでも言い抜けは出来る。
イジメられていた爺さんを助けただけだ…
それで良い。
しかし角を曲がったとたんに僕は全速力で走りだした。
とりあえず店からはなれなければまずいと思った。
婆さんを迎えに行って良夫ちゃんを捜さなければならない。
携帯電話は僕しか持っていない。
良夫ちゃんは、まさか店には戻らないであろう。
婆さんが先だと判断して婆さんがいるであろう方向に走った。
すると婆さんはすぐに見つかった。
心配そうに聞いて来る。
「良夫ちゃんは?」
ポックリ逝かれても困るので何気なく言った。
「全然平気、その辺にいるから」
安心したようなので、通り掛かりのタクシーを停め、婆さんを乗せ、近辺を良夫ちゃんを捜して流した。
良夫ちゃんを見つける少し前に、赤灯を回したパトカーが二台すれ違った。
どう見てもパチンコ屋の方向へ向かう。
良夫ちゃんの車がヤバイなと思ったが仕方ない。
良夫ちゃんを見つけた時、良夫ちゃんは何事も無かったような顔をしていた。
お礼も言われた覚えがない。
恩に着せるのもカッコ悪いので、平気かい、とだけ聞いた。
「平気です」
それで終わりだった…
えーー!
疲れたんですけど~
この時、換金していないレシートを、二人は何万円か持っていた。
僕は換金してあった。
この事件の後は、二人とも言わないのに途中で換金するようになった。
良夫ちゃんの車を知り合いに取りに来てもらい、レシートを交換してもらった。
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