知らぬ間にゴト師10

こののち、息子の良夫ちゃんには何度も危機に落とし入れられたが、婆さんには何度も助けられた。

この時も、パチンコを打つ姿に全く不自然さは無く、年寄り二人なので疑う人間も居なかった。

みんな【まさか】と思う。

ゴト師には、うってつけのキャラクターであった。

婆さんの得意技は【ボケた振り】

変造カードの終わりと共に、危険なゴトは引退させたが、一度も捕まる事は無かった。

逆に息子の良夫ちゃんを何度も助けた。

断る理由が見つけられなかった。

年寄りが居る事を僕に伝えないように妄爺に頼んでいた。

年齢を言えば当然断られる事を、分かっていたのであろう。

出来る事を見せれば大丈夫だと思っていたそうである。

確かに無難に、こなしていた。

オドオドせずに、周りに溶け込んでいた。

しかし、どうしても年齢が気になった。

突然死なないか?

捕まった時、ミジメ過ぎないか?

帰りの車の中で僕は言った。

「上手くはやれてたけど、責任持てないから無理だよ…」

切り返すように婆さんが言う。

「あなたに責任は無い。捕まっても絶対あなたの事を警察に言わないです」

少し話すと、ボケた所は全く無いように見えた…

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警察とかの問題じゃないんだけどなぁ~と思いながらも僕は一緒にやる事を決めた。

変造カードの値段は一万円のカードを千円にした。

実際にパチンコホールで使う人間の中では安かった。

二人が一日10枚づつ使うと、何もせずに僕は、一万円になった。

そこに同情は無い。

千円と聞いて二人はビックリした。

やべ… 高かったか?

少し焦った。

しかし二人は、一万円の変造カードを四千円で買っていたと言う。

完全な鴨だ…

もっと高く言えば良かった!

そう思ったが、喜んでいるので、まあ良いかと思った。

こうして車を持たない二人を連れてゴト師稼業は続いて行く。

この夜、妄爺にブウたれたのは言うまでも無い。

ハゲジジィ!!


次の日から三人の珍道中が始まった。

その日、初っ端の店でいきなりビビらされた。

複数で店に入るのは初めてだったので、今まで僕が廻った中で、楽だと思った店に行った。

店の中でお互いが仲間だとバレると何かあった時に困る。

なので他人の振りをする事を約束させた。

何かあった時だけ背中を叩けと伝える。

パチンコホールに入れば目も合わせない…

僕は二人とは違う列で打ち始めた。

一時間程して二人を見に行った。

二人で並んで打ってやがる!

それもベラベラ喋りながら… 

完全に夫婦に見える。 

二人の足元には何箱かの出玉が積まれていた。

後でしっかり注意しないとダメだなと思いながら自分の台に戻った。

それから一時間ぐらい経った時、良夫ちゃんに背中を叩かれた。

ギクッとした。

「緊急なの?」

そう聞いたら良夫ちゃんは平気な顔で答えた。

「別に急いでません」

は?

喋り掛けるなって言った筈だけど…

「なら車にいて」

それだけ言って自分のカードを消化した。

車に戻り、なんかあったの、と聞くと、カード無くなったんで下さいと言う。

え?

まだ二時間…

十万円分のカードを一人づつに渡していた。

当然落としたか、なくしたのかと思った。

使い切れる時間では無い。

まさか…

「玉抜きしたの?」

良夫ちゃんは、何事も無い様な、平気な顔で答えた。

「はい」

呆然とした…

「とりあえず店出よう。 婆さん呼んで来て…」

「いま確変中です」

「あ、そう… 終わったら車来て、移動するから…」

しかたなく、それだけ言った。

プッツンや! あいつらプッツンや!!

そう思いながら車の中で二時間待った。

確変が止まらない…

二時間後…

満面の笑みを浮かべ、両手いっぱいに景品を抱えた二人が換金所に並んだ。

その額なんと30万円。

所要時間4時間…

化け物だ…

罪の意識の無い奴らを怒っても仕方ない。

その日は、一軒でやめてルールの確認をした。

二人を送って行く帰り道、婆さんの家に近いファミレスで話しをした。

まずはどうやって玉抜きをしたかを聞いた。

それによると、席に着いてすぐに、二人共確変を引いたと言う。

前に変造カードを買っていた所は、一日にカードを使わなければいけないノルマがあったと言う。

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