毎日昼過ぎにパチンコ屋に向かう生活が始まった。
一緒に暮らし始めた彼女には仕事が何かも告げていない。
この頃の変造カードゴトは、罪の意識さえ捨てれば誰にでもやれる簡単な物であった。
いくつものゴト(コソ泥)に関わったが、一番簡単なのが【打ち子】と言われるゴトである。
打ち子とは、一切の道具を持たない状態で、指定されたお店の、指定された台を打ち、上がりを貰う奴らをさす。
何かの道具を持てば〇〇ゴトと名前が変わる。
道具を持たないので捕まる可能性が極めて低い。
中には店側に身柄を押さえられ、自分でゴトだと喋るアホな奴もいたが…
基本は喋らなければ逮捕されない。
打ち子と単純にひと括りに言うが、彼らを使う人間の種類によって貰う賃金などは変わる。
使う側の人間は様々いる。
使う側とは…
普通は運まかせのパチンコやスロットだが、確実に玉が出せる状況を作った人達である。
いくつか上げます。
パチンコ屋さんの店長クラスの設定をいじれる人と話しを付け、高設定の台を教えてもらう。
これは店長クラスの人だけに危険がある。(クビや逮捕など)
喋られたら別である…
同じ店長クラスと話しを付けるのにも種類がある。
パチンコ台やスロット台に、店側の人間がゴト道具を取り付けたりする方法である。
代表的な道具が裏ロムやハーネスと呼ばれる…
ん!
これを書き進んだらマズイ予感がします…
この勘?が僕を捕まらせなかった唯一の武器です。
自分に従い話しを曲げます。
曲げた話しも想像力や空想力が付いたら、そのうち書けると思います。
僕が絡んだゴトで上から二番目に楽な変造カード。
それはテレビ等で騒がれるまでの短い期間であったが、ゴト初心者にはうってつけであった。
何が楽かと言うと、変造カード自体を店側が詳しく知らない事が多い。
なのでエラーが出て、金額表示の所に見慣れない文字が出ても店員には意味がわからない。
サンドの上の点滅ランプに気付かれてもカードを抜いて返してくれる店もある。
まさにやり放題であった。
防犯意識の低い店などでは、パチンコを打たずに変造カードを玉に変える作業をする。
通称【玉抜き】
台に座り変造カードを投入して貸玉ボタンを押し続けるのである。
当たりを引いていないのに箱が積み上がる。
その積んだ箱を、当時は自分で計量機に運んで流せたので、二、三箱貯まると流す。
換金率によって違うのだが、等価交換のお店なら一万円の変造カードが一万円の現金になる。
500円ぐらいで買い取った変造カードが9500円の儲けになるのであった。
パチンコを打つより当然早い。
一軒のホールで、大量にやるのは、店側のカードのデーター的にまずいので、五万円ぐらいでやめて、一日四軒ぐらい廻る。
単純に手取り20万円になる。
その中で店の防犯や、店員の動き、お客さんの挙動、いかにすれば疑われずに行動出来るかを学んでいった。
学ぶ…?
ここまでは大丈夫、これ以上はヤバイと言う限界を見る事で、半年もすると怖い物は無くなっていた。
僕は朝起きれさえすれば真面目なゴト師?だったのでお金も驚く程貯まっていった。
仕事が終わると必ずと言っていい程、妄爺を誘いご飯を食べに行った。
多分誰かに、キツイと泣き事を聞いて欲しかったのかもしれない。
ご飯とはホントのご飯である。
妄爺はお酒は飲めなかった。
こいつホントにヤクザだったのかと思わせる人であった。
僕が持っているお金は六ヶ月で、一千万円を軽く越えていた。
半年前まで、手の平を芋の熱で水膨れだらけにしていた僕は、お金持ちになった。
もうすぐ六月になろうとしているのに、芋を売り続ける、妄爺の手の平は水膨れだらけであった。
「金はあるんだ!」
そう、いくら言っても、いらないよ、と言い、言う事を聞かない偏屈爺さんであった。
そんな妄爺が、食えない奴が居るんだけど、面倒見れないかと聞いてきた。
面倒?
ウザイよ…
はっきり言って一人が良かった。
僕に面倒見れないかと聞くのだから、当然ゴトであろう。
自分一人が捕まるのなら誰にも迷惑は掛からない。
人の生き死にまで背負いたくはなかった。
「根性無しは捕まるよ。それでも良いなら…」
妄爺にはホールの中で危険な目に合った事などは話していなかった。
楽な部分とオモシロ話しだけである。
ボケてやがるから勘違いしたんだなと思った。
このころテレビで変造カードがチラホラ取り上げられ始めていた。
しかしテレビで取り上げられたのは必ずしも悪い事ばかりではない。
ホールの対策が大きく分けて二つになった。
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