使う方にすれば、何回もサンドに出し入れしないで済む、一万円のカードが1番楽であった。
しかしその様な様々な理由で小額カードがメインに使われていた。
エラーの出るタイミングはいくつかある。
まずは変造カードをサンドに入れた瞬間。
貸玉ボタンを押した瞬間。
カードの返却ボタンを押した瞬間。
カードが使い終わり、自動で使用済みカードが返却されるはずの瞬間。
何かの行動を起こした時に、ほとんどエラーは出ていた。
だから、なるべくエラーを出さない様に、カードは一度サンドに入れたら、使い切るまで抜かないように行動を少なくしていた。
出る時は出てしまうが…
エラーが出るタイミングがホールに入ってすぐなら店を変われば済む。
しこたまハマった台でエラーが出ても店を変われば済む。
ダルいけど…
問題は出玉が沢山、出ていた場合…
これは最初の17枚の変造カードを使った時の、エラー初体験のお話しです。
カードの仕組みは電話でキレ爺に聞いていた。
嫌な事は先延ばしにしたいので、初当たりを引いた時、カードをサンドから抜いていなかった。
返却ボタンを押すと、エラーが出る時があるらしいから…
あれよあれよと、その後連チャンして、気付けば足元には20箱の出玉…
金額に直すと10万円を少し越える。
そろそろやめようと思った。
エラー出んなよ出んなよと思いながら返却ボタンをポチッと押した。
そうです…
話しの流れ以上出なけりゃおかしい。
出ました、エラー!
金額表示のトコに見た事のないデジタル文字。
サンドの上の赤いランプの点滅。
一瞬ぼんやりした。
少ししてビクッ!てなった。
更に少しして泣きたくなった。
何故このタイミングで…
神様…
僕が何か悪い事をしましたか?
天から声が聞こえた…
【してるやん!】
うなだれる僕…
しかし半泣きでうなだれている場合じゃない。
パチンコの列を店員がウロチョロしている。
サンドのエラーランプに気付くかもしれない…
早く、どうするか決めなきゃ…
僕捕まっちゃう…
全部捨てて逃げるか?
しかし、それらは思うだけであった。
エラーが出た時にビクッ!ってなったのは確か。
気を抜いてる時にエラーが出るとビクッ!ってなるのは、変造カードが終わるまで全く慣れなかった。
選択肢に、10万円を捨てて逃げるは有り得ない、僕はビンボー人であった。
通り掛かかった店員に、普通に、やめるって言った。
出たトコ勝負だと思っていた。
少々お待ち下さいと言って、玉を運ぶ台車を取りに行く店員に、怒鳴る様に言った。
「時間ないから急いで!」
店員は、全くエラーランプに気付かなかった。
僕は自分の台の横に、店員の邪魔にならないように立っていた。
台車に玉を乗せて、軽く僕の台を、店員が雑巾で拭く。
余計な事を…
金額表示の所にはエラー表示が出ている。
あ…
ばれたか?
そう思いながらもソコに立ち続ける…
走るのは最後の最後だと決めていた。
嫌だ…
金の無い暮らしは…
強くそう思っていた。
走り出しそうな足を必死に押さえた。
店員が振り向いて言った。
「あれ?カード抜きました?」
ドクンと心臓が跳ね上がる。
最初から、カードを回収出来たらして帰ろうと思っていた僕は、平静を装い言った。
「あ~忘れてた…」
店員は【サンド用の鍵】でロックを解除して変造カードを取り出した。
「早くしてくれよ!時間無いんだから!」
そう言いながら僕は店員が抜いたばかりのカードを手からもぎ取った…
心臓が早鐘の様に鳴っている。
店員は何の疑いもしないで、慌てて台車を押して玉の計量機に向かった…
助かった?
のか?
その後ろ姿を見ながら、僕のチンチンが縮んでいた事は言うまでもない事である。
まだまだ変造カードがテレビで騒がれて居ない頃であった。
この後にキレ爺と初めて会った。
カードの値段や取引方法を教えてもらいゴト師生活がスタートした。
この時、キレ爺に回収したエラーカードを渡して、エラーはどれぐらい出るのかを聞いた。
作りが良ければ200枚に1枚。
悪ければ20枚に1枚と言われておののいた。
マジで…
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