知らぬ間にゴト師6

使う方にすれば、何回もサンドに出し入れしないで済む、一万円のカードが1番楽であった。

しかしその様な様々な理由で小額カードがメインに使われていた。

エラーの出るタイミングはいくつかある。

まずは変造カードをサンドに入れた瞬間。

貸玉ボタンを押した瞬間。

カードの返却ボタンを押した瞬間。

カードが使い終わり、自動で使用済みカードが返却されるはずの瞬間。

何かの行動を起こした時に、ほとんどエラーは出ていた。

だから、なるべくエラーを出さない様に、カードは一度サンドに入れたら、使い切るまで抜かないように行動を少なくしていた。

出る時は出てしまうが…

エラーが出るタイミングがホールに入ってすぐなら店を変われば済む。

しこたまハマった台でエラーが出ても店を変われば済む。

ダルいけど…

問題は出玉が沢山、出ていた場合…

これは最初の17枚の変造カードを使った時の、エラー初体験のお話しです。 

カードの仕組みは電話でキレ爺に聞いていた。 

嫌な事は先延ばしにしたいので、初当たりを引いた時、カードをサンドから抜いていなかった。

返却ボタンを押すと、エラーが出る時があるらしいから…

あれよあれよと、その後連チャンして、気付けば足元には20箱の出玉…

金額に直すと10万円を少し越える。

そろそろやめようと思った。

エラー出んなよ出んなよと思いながら返却ボタンをポチッと押した。

そうです…

話しの流れ以上出なけりゃおかしい。

出ました、エラー!

金額表示のトコに見た事のないデジタル文字。

サンドの上の赤いランプの点滅。

一瞬ぼんやりした。

少ししてビクッ!てなった。

更に少しして泣きたくなった。 

何故このタイミングで…

神様…

僕が何か悪い事をしましたか?

天から声が聞こえた…

【してるやん!】

うなだれる僕…

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しかし半泣きでうなだれている場合じゃない。

パチンコの列を店員がウロチョロしている。

サンドのエラーランプに気付くかもしれない…

早く、どうするか決めなきゃ… 

僕捕まっちゃう…

全部捨てて逃げるか?

しかし、それらは思うだけであった。 

エラーが出た時にビクッ!ってなったのは確か。

気を抜いてる時にエラーが出るとビクッ!ってなるのは、変造カードが終わるまで全く慣れなかった。

選択肢に、10万円を捨てて逃げるは有り得ない、僕はビンボー人であった。

通り掛かかった店員に、普通に、やめるって言った。

出たトコ勝負だと思っていた。

少々お待ち下さいと言って、玉を運ぶ台車を取りに行く店員に、怒鳴る様に言った。

「時間ないから急いで!」

店員は、全くエラーランプに気付かなかった。

僕は自分の台の横に、店員の邪魔にならないように立っていた。

台車に玉を乗せて、軽く僕の台を、店員が雑巾で拭く。

余計な事を… 

金額表示の所にはエラー表示が出ている。 

あ…

ばれたか?

そう思いながらもソコに立ち続ける…

走るのは最後の最後だと決めていた。 

嫌だ…

金の無い暮らしは…

強くそう思っていた。

走り出しそうな足を必死に押さえた。

店員が振り向いて言った。

「あれ?カード抜きました?」

ドクンと心臓が跳ね上がる。

最初から、カードを回収出来たらして帰ろうと思っていた僕は、平静を装い言った。

「あ~忘れてた…」

店員は【サンド用の鍵】でロックを解除して変造カードを取り出した。

「早くしてくれよ!時間無いんだから!」

そう言いながら僕は店員が抜いたばかりのカードを手からもぎ取った…

心臓が早鐘の様に鳴っている。

店員は何の疑いもしないで、慌てて台車を押して玉の計量機に向かった…

助かった?

のか?

その後ろ姿を見ながら、僕のチンチンが縮んでいた事は言うまでもない事である。

まだまだ変造カードがテレビで騒がれて居ない頃であった。

この後にキレ爺と初めて会った。

カードの値段や取引方法を教えてもらいゴト師生活がスタートした。

この時、キレ爺に回収したエラーカードを渡して、エラーはどれぐらい出るのかを聞いた。

作りが良ければ200枚に1枚。

悪ければ20枚に1枚と言われておののいた。

マジで…

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