知らぬ間にゴト師2

何が情けないって…

どんなに頑張ったって芋売れない。

カッコも悪いし… 

季節も悪かった。

夏が終わったばっかりで、周りはTシャツで歩いている奴がいっぱい居た。

お前が阿保だと思うでしょ?

面接の前に電話して、コジキの親玉に聞いてはいた。

「まだ暑いのに芋売れるんですか?」

親玉は、自信満々に言った。

「バンバン売れてるよ!」

コジキの親玉、すぐばれる嘘を平気で付く。

来てみりゃ売れてる奴なんかいやしない。

1番売ってる奴で8千円。 

8千円と言っても、そこから借りてる車代とか、ガソリン代とか寮費とか、芋の代金とか引かれるから、手取りなんて3千円もあれば良いほうだった。

同期のオッサンと僕なんて、売り方も慣れていないから、取り分は500円前後だった。

小学生の小遣いか… 

ご飯も三回なんて食べるお金無いから、売れ残りの、芋ばっかり食べていた。

だからオナラばっかりこいていた。

おならプゥってすると、オッサンと僕のおならは同じ匂いがしたんです。

芋食うと屁がでる。

本当の事です…

それでも10日も経つと僕は芋が売れ始めた。

手取りで五千円ぐらい。

かわいそうだったのが同期のオッサン。

オッサンじゃ分かりづらい…

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いくら妄想とは言え、名前ぐらいは付けてやらねばなるまい…

でも面倒臭いから妄想の妄の字を取って【妄爺(モウジイ)】でお願いします。 

爺って付けたけど年は僕の30才上で53、4だったと思う。

ジジイの歳に興味が無い。

この妄爺、どこが可哀相かって言うと、変に律儀で、一番後輩だからと言って皆の下手に出る。

だから利用される。

その上綺麗好き。

余り喋らないけど喋れば随分しっかりしていた。

みんなに妙に優しかった。

顔の作りだけ見れば、映画、仁義なき戦いの菅原文太に似ていた。

悲しいかな、野球帽取るとハゲだった。 

寮に前から住んでいた20代、30代、50代のロクデナシ達は妄爺をいつもいびっていた。

六畳に、二段ベット二つだから一人寝床からあぶれる。

得意の、俺一番後輩だから、と言って妄爺は台所で寝ていた。


そんな事されたら僕の立場は?

「替わるよ」

そう言っても言う事を聞かない。

掃除とかも全部するし、買い出しなんかも進んでしていた。

それを見て、三人のコジキ達は、感謝するどころか馬鹿にしてイジメていた。

こんな底辺に落ちて来てまでも、人は自分よりも下の人間を作りたいんだなと思った。

面倒臭いから、放っておいた。

それでも少しは優しくしたりした…

妄爺に優しくするもんだから、コジキ三人組は僕の事もイジメて来た。

人の事なら100年でも我慢出来るが、自分の事なら一秒たりとも我慢は出来ぬ…

すぐキレた。

多勢に無勢で勝てなかったけど根性はしっかり見せた。

その日から、みんな僕を苦手になった…

何を勘違いしたのか、それ以来、妙に僕に懐く妄爺…

朝起きれないのを、いつも起こして貰っていたから無下にもしづらい。

仲良しになった… 

ベットも横取りしてあげたし、芋の売り方も教えてあげた。

それでも妄爺は芋が売れない。 

芋ばかりじゃ死ぬから、飯食わせるよと言っても頑なに拒む。

ハゲって頑固だからハゲたのかなと思っていた。

体の限界は近かったはずである。

そんな時、妄爺がポケットから変な物を出して来た。 

「これ使えるのかな?」

見た時、使い終わったゴミだと思った。

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