流転 56

「そんでその左足が地面に着く前に更に右足上げんだよ。それを早く繰り返す。そうすっと、あら不思議!空へ駆け上がる!どこまでも駆け上がる!」

「何言ってんの…?」

「何って?あ〜 足の回転は早くしろよ。じゃないと飛べない」

「そんなんじゃ飛べない!」

僕は笑いながら言った。

「そりゃお前は貧乏人だからな」

「金関係ない!じゃあやって見せてくれよ!」

「金払えばいつでも見せてやるよ」

リュウが呆れた顔になった。

僕は構わず言った。

「今の話で僕が言いたかった事が分かるか?」

「え…?分からない。金の儲けかた?」

「違う。いらない話をするなって言ってんだ。時間の無駄だ。設定の道具なら設定だけの話しをしろ。僕の話の方がチマチマしたスロット話より、なんぼか面白かっただろ。お前が僕にした一般の世界のスロット話は僕には必要無い。あれは小銭を稼いで喜んでる奴らの話だ。僕達は犯罪者だって事を忘れるな。分かったら道具の説明をしてくれ」

リュウは小さく首を横に振り続けていた。

僕はこの後もスロプロがするような話をされるたびに誰彼構わず、やり込めるように突っ掛かって行った。

僕はパチプロやスロプロと呼ばれる人種が嫌いだった。

彼らはゴト師にとって邪魔な存在であった。

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パチプロやスロプロと呼ばれる人種は決してプロチームとの契約をしている選手の事では無い。

パチンコやスロットで食べている事で、周りがそう呼んだり全て自称であった。

例え、きちんとした職業についていて、仕事終わりや休日だけパチンコやスロットをする人でも、勝ち続けていれば、パチプロ、スロプロと呼ばれた。

いわゆる勝ち組の人達の事である。

僕にはインチキせずにパチンコやスロットで勝つ人など信じられなかったが彼らはインチキせずに勝ち組なのである。

稼ぎは人によってまちまちだが法律に触れる事はしない。

ならば神のようなギャンブラーかと言えばそうとも言えない。

サイコロを転がして出目をピタリピタリと当てる能力は彼らにはない。

ならば、なぜ勝つかと言うと、そのほとんどが努力と忍耐による。

そこに少し運がまざる。

それが、パチプロ、スロプロと呼ばれる人種である。

彼らは狙い台を事細かく研究し、台のクセを読み取り、前日のデーターを取り、お客さんの流れを読み、店側の思惑を読み取る事に終始する。

そしてパチンコ屋が閉店した直後から明日の狙い台を取る為にパチンコ屋の前で並びながら野宿する事も辞さない。

上手く狙い台を取れても既に明日の狙い台を探して頭は回転している。

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