意味の無い対策に電波ゴト師達は笑っていた。
携帯使用を禁止している、電波ゴトをやられない敏感センサー付きの店の情報が、間違って伝わった結果であろう。
ゴトの被害額とあわせてお客さんを直撃した事になる。
長時間遊戯する場合、携帯の電源すら入れられない事は結構ツラい。
敏感過ぎるセンサーはパチンコ屋側から見ても迷惑な物だったのであろう。
普及率は余り伸びてはいなかった様に思う。
しかし確実にギンパラの電波ゴトはやりづらくなった事は事実である。
どんなセンサーでも、センサーが取り付いた店での電波ゴトは出来ない。
電波を飛ばすとビービーと警告音が鳴ったり、赤や青のパトランプが回るのではたまった物ではない。
しかし後に失敗作のセンサーを攻略したゴト道具は登場する。
この当時は、センサーの付いていない店を探して移動する事になった。
電波ゴト師達が、出来る店に集中する為、店側もゴト師を見つける目を持ち始める。
必然的に、防犯のユルい近県へと出稼ぎに出る。
更に時間をおって全国へと出稼ぎに出て行く様になっていった。
現代の様々なセンサーにも敏感な物は見かける。
確かにゴトは、やりづらくなるだろう…
しかし、敏感がゆえの弊害は必ずある…
ギンパラの電波ゴトは、変造カードよりも、少し長く続いた。
しかしその差は、数カ月ほどだったと記憶する。
ギンパラの電波ゴトが東京でやりづらくなった頃から、道具のレンタル賃を下げ始めた。
当初一日4万円で貸していたものを、3万、2万、1万と下げていった。
まだまだ地方にさえ出れば稼げていた時期なので値下げなどする必要はなかった。
周りでは、ゴト師を、がんじがらめに縛り付けて電波ゴトをさせている所が目立った。
リュウは値下げに反対していた。
しかし僕は、余りにも現場を知りすぎていた。
苦労が見える。
ギンパラゴトをしていた手下達は、道具さえあれば僕を必要ともしない。
搾取には限界があると思っていた。
能力者からの搾取は、いつまでも続けてはいけない…
リュウにそう言って納得させた。
しかし本音は違う。
いつまでも道具を手下達に売る事はせずに、レンタル賃をとり続ける事が恥ずかしかっただけである。
僕は完全なるタカリ屋であった。
それを、値段を下げていくことでごまかした。
そう言う事である。
レンタル賃は減ったが、リュウはこのお金を手にする事で、何の問題もなく暮らしていけた。
リュウに言った。
「金にしたいなら、早くなんか道具探せよ」
このポンコツドザエモン野郎…
「いま探してるヨ」
胡散臭いと思ったが、リュウは本当に道具を探していた。
この時期にウンコマン小池が東京拘置所から出所した。
僕が差し向けたヤメ検弁護士を自分で雇った小池は、実刑2年6ヶ月、執行猶予4年の有罪判決をくらっていた。
求刑が、刑務所に入る可能性が高い3年だった事を考えると、勝ちと言って良い、執行猶予付き判決であった。
しかし、裁判が終わるまでに掛かった金額を聞いて焦った。
国選の弁護士を付けて、終わりまで裁判を戦った場合、ほとんどお金は掛からない。
しかし判決もどうなるか分からない。
求刑が3年だったので、ほぼ間違いなく刑務所に入る結果になったとは思う。
私選の普通の弁護士を雇った場合、30万円から80万円ほど掛かるのではないだろうか。
弁護士の熱意や能力によっては、執行猶予を勝ち取れる。
確実に勝つ為のヤメ検弁護士…
僕達の最後の砦…
小池の刑務所で過ごすはずだった2年6ヶ月の値段は220万円であった。
恐るべきボッタクリ弁護士である。
聞いた時に、飲んでいたコーヒーを吹き出した事を記憶している。
しかし全てが弁護士費用と言う訳では無い。
逮捕の際に抵抗して傷をおわせた店員との示談交渉金が含まれている。
慰謝料と言う奴である。
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