呼び出し音が鳴る。
気付いていないだけだと知った。
しつこく何度も掛けた。
呼び出し音を聞きながら、良夫ちゃんがわざと出しているのかどうかの確認の方法をヒネり出す。
わざと出しているのか自然に出ているのかを確実に知っておかなければ対処を間違う。
しかし僕は、良夫ちゃんは間違いなくわざと出していると決め付けていた。
呼び出し音は、数回鳴った所で留守電へと接続された。
5分程何度もかけ直しを繰り返した所で良夫ちゃんが電話に出た。
遅ぇ…
だるい…
少し頭にきていた。
しかし声や言葉には出さない。
良夫ちゃんが嘘のカラに閉じこもってしまう。
シラを切ると決めた良夫ちゃんを喋らせる事は物凄い労働力である。
こっちが先に参ってしまう…
時間もない。
パチンコ屋内の騒音で声が聞き取りづらい。
外に出るように指示をした。
良夫ちゃんの嘘はカマを掛けて潰す事にいつも決めていた。
トボケに入られたら負ける…
トボケ続けたら勝ちだと思っている男である。
「調子良いらしいね。中華ソバが、いっぱい出してくれてるって喜んでたよ。いま何回出てんの?」
「37回です…」
ぶっ倒れそうになった…
お前…
いくら何でもやり過ぎだろ…
限度を知らない奴である。
平静を装い言った。
「なんだ、そんなもんか… たいした事ないじゃん。連チャンしないの?」
「あんまりしません…」
はい…
わざと確定です!
しかしまだ責めるには早い。
最後の一回が大連チャンしたなどと言い抜けされてしまう。
息の根は完全に断たないと、よみがえるのである。
丸めた新聞紙で叩き潰せたと思ったゴキブリが突然飛び立つ感じに似ている。
「そうか… 大変だったね。最高何連チャンしたの?」
「8です」
逃げ道と信じて隠れた先がゴキブリホイホイだった瞬間である。
もう言い抜けは出来ない。
てか、言い抜けは許さない!
一気に捻り潰す!
ゴキブリホイホイを…
死ね!!
「本当は中華ソバ喜んで無いよ。マジ切れしてる。出すの20回って言われてんじゃないの?」
「え!?」
その後の言葉が続かない。
「え、じゃない… 何でそんなに出すの?連チャンの最高が8回なら、どんなに多くても30回ぐらいには押さえられたでしょ?わざと出したよね」
「いや、最後の一回のセットが連チャン……」
みなまで言わせず突っ込んだ。
「いや!最後の一回が8連チャンしたとしても、37回出てるって事は、最後のセットは29回出てる時に掛けたって事だよ」
良夫ちゃんは絶句していた。
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