「動かなく?マジで? とりあえず持って来てよ… 修理に出すから…」
そして手渡された道具を見て僕は愕然とした。
「ぺっちゃんこじゃん!!」
何してくれとんねん!!
道具は、明らかに修理不能に見える程潰れていた。
試しに、修理に出してみた所「ゴミですネ」とアッサリ突き返された。
終わった…
「弁償してくれよ!」
「知りません」
「知らない事無いだろ!」
「最初からでしたよ」
えーー!?
んな訳ねー!!
堂々と平気でトボけるのであった。
敵に廻すと恐ろしい男である。
この良夫ちゃんの言い訳に焦ったのは、夜に道具を貸した手下である。
僕の手を介さずに、前日の夜、直接良夫ちゃんに道具を手渡していた。
良夫ちゃんが、最初からと言い張るので、嘘だとは確信したが、証拠を突き付けるしかない。
僕は前日の道具の状態を見ていない事は見ていないのである。
手下を呼び出した。
ぺちゃんこの道具を見た彼の表情を見た瞬間、僕は吹き出した。
目と口が限界まで開いてヨダレが垂れそうになっている。
驚愕…
まさにソレであった。
どもり気味に彼が言う。
「こ、こ、これ… お、俺が、やったって言ってるんすか?」
そうだ、などと言えば、良夫ちゃんを絞め殺してしまいそうな顔である。
僕は笑いながら言った。
「分かった。もう良いから帰りな。新しい道具はすぐ渡すよ」
手下は、信じられない信じられないと何度も繰り返しながら帰って行った。
良夫ちゃんは暴力に弱い。
手下に殺られる危険を感じたのであろう、渋々弁償した。
いくら何でも当たり前である。
すぐに道具を渡すと手下に言ったが、この頃は道具を入手するのに時間が掛かり、彼は暫く電波ゴトが出来なくなった。
当然僕に入る道具のレンタル賃も無くなった。
手下も被害者であったがまたしても僕も被害者であった。
その後、良夫ちゃんに、自分の担当する道具を触らせる奴はいなくなった。
良夫ちゃんは、60万円程を支払って、遂にギンパラゴトを諦めたのである。
しかし、最後まで、知らない内に壊れていたと言い張る事はやめなかった。
「あの人の家の子供が踏んだかな〜?」
しかし僕は知っていた。
あの人と言われた人の家に子供が居ない事を…
犯人は良夫ちゃんで、壊し方が、踏んだ事が原因である事が確定した。
ギンパラの電波ゴトが出来ない事により、婆さんと良夫ちゃんは、受付機が設置された段階で干上がる事になったのである。
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