出来る奴いねぇんじゃねーの?
僕のテンションはダダ下がりである。
良夫ちゃんと婆さんぐらいか?
いや…
婆さんは駄目だな…
老人が機械の前に立ち、モタモタやっていれば、店員達は良かれと思ってすぐ手伝いに来る。
その上婆さんには、この時別口の仕事があった。
その仕事は中華ソバから回って来た。
「知り合いが裏ロム取り付けてる店があるんだけど、あのお婆ちゃんと良夫さん、打ち子やってくれないかナ?」
え!
マジで!?
あの二人…?
平気か、おい??
「聞かないと分からんよ… あの二人だけか?」
中華ソバは、見た目が大人しい人じゃないと駄目だと言う。
二人は確かに見た目は大人しい…
しかし、その実態は…
中華ソバは、爆弾を抱え込もうとしている事に気付いていなかった。
アホである。
僕は中華ソバに条件を聞いた。
「あんまり安いとやらないと思うぞ。二人ともカードで一日最低でも10万は稼いでるからな。何割渡せんの?」
「え!?そんなに稼いでるのカ?」
この誘いは、受付機が設置されると発表がある、数ヶ月程前の事であった。
受付機設置が発表される前とは言え、カードゴトの儲けは、軒並み下降線を辿っていた。
手下達の手にする儲けは一日6万円前後ではなかったか。
この時期既に、話しの付いていない店で、玉抜きなどする人間はほとんど居なかった。
店側の、変造カードゴト師にたいしての防犯意識が高まっていたのである。
見逃している店ですら、玉抜きは追い出される原因になった。
お客さんの全てが変造カードと言う物を知っている。
玉抜きを見逃し続けるとお客さんにバレる可能性がグンと上がる。
隣りの台で、当たりを引いていないのに玉が増えるので、店員より先に、お客さんが気付く事が多いのである。
すると店側は信用を失うのであった。
「この店ゴト師と組んでる!」
などと言われるのである。
テレビでの、かたよった報道のせいであった。
お客さん達は、単純に変造カードゴトを自分達の損害に繋がると思い込んでいる。
ところが実際は逆なのである。
僕達が必死にやっていた変造カードゴトは、金銭的にはパチンコ屋に利益しかもたらさない。
損害は全てカード会社の物である。
僕達が使う変造カードの2、3割の金額は、パチンコ屋の懐に自動で転がり込む。
一般的に言われる、ゴトの被害額は、巡り巡ってお客さんの財布を直撃する、などにはあたらないのである。
変造カード以外のゴトで普段はお客さんに迷惑を掛けているとパチンコ屋が思えば、変造カードゴトによる儲けを、お客さんに還元出来たのである。
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