それだけではAの打つカードが無い。
当然Bが他の店でAの為に同じ事をする。
二人セットで行動すれば案外簡単に受付機3割の変造カードでもゴトは出来る様な気がした。
少し光りが見え始めていた。
タケコブタに着くと、源次は既にパチンコを終えていた。
駐車場の片隅に座り、缶コーヒーを飲んでいる。
お、アイツもたいして出てないな…
そう思いながら、車のクラクションを軽く鳴らした。
無表情で車の助手席に乗り込んで来る。
そのままの無表情で源次が言った。
「平気でしたか?」
「平気だよ。何にも出ないけどね…」
数分の間を空けて源次が言った。
「いま一人で行くの怖くなかったんですか?アナタは何か怖い物とかありますか?」
ギクッとした。
また説教か…
やめろよ…
疲れてんだから…
下手な返事は出来ないと思った。
なるべく説教に移行しない様に答える。
「怖くない。馴れてるし。怖いのは、アンタの説教が1番怖い…」
てかウザい…
どうだ?
セーフか?
アウトか!?
「アナタは私が見て来た人達の中で1番根性がある人です」
それきり源次は黙った。
僕は怪訝な顔で源次を見た。
なんだよ〜
褒めたのか?
油断させて於いて説教ポイント探してんのか?
何から説教が始まるのかが分からない。
油断禁物であった。
疲れが倍加していた。
変造カードの出来具合と今後の仕入れを話す為にタナカ達と待ち合わせした。
そこへ向かいながら、先程思い付いた、カードの楽な使い方を源次に話した。
「そうですね。受付機を通した人と別の人がカードを使うなら出来そうですね。ただ、疑われた人がキレると言うのはどうですかね…」
「なんで…?それが早いじゃん」
「普通そんな事出来ませんよ。誰が出来ると思いますか?みんなイキナリ逃げるでしょ」
ん?!
逃げるかな?
「イキナリ逃げたら追い掛けられるよ」
「それでも皆逃げますよ。アナタとは違うんです。皆、怖い物を怖いと思うんです」
アホか…
僕は怖がりだ。
しかし言われてみると、皆イキナリ逃げる様な気がする。
逃げるなと教えると、いつも僕は頭がおかしいと言われて来た。
源次の言う通り、今度も僕は、おかしいと言われる予感に包まれた。
少し見えたと思った光りが急速に消えて行った。
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