対策 対応策29

「じゃあ僕帰りますね」

近いうちに、必ずダニから僕に連絡が来ると思っていた。

金に汚い頭とやらで、何が得か計算しろ…

答えは出ている…

この先、回収が不可能に近い金よりも、お前は、目先の金に必ず飛び付く…

間違い無い…

伝票を取り席を立つ。

ダニが声を上げた。

「ちょっと、もう一回座れよ…」

来た!

余りにも思い通りである。

僕は、吹き出しそうな笑いを我慢した。

「ん?何ですか?」

そう言いながら席に座った。

ダニの顔と、ゴキブリの顔が、なぜかダブって見える。

僕は既にダニを呑んでいた。

「その仕事何の仕事だよ」

「言えません。完全にカタギの仕事だから、ヤクザ屋さんには絡んで欲しく無いんです。これは相手の希望です。源次さんの機械をいじる技術に400万出すって言ってます。400出るのは、借金が全部キレイになる場合だけです」

ダニは僕を睨む事をやめない。

僕は怒りが顔に出ない様にボンヤリ見返す。

1分程の時間が過ぎた。

ダニが、痺れを切らしたのか、損得の計算が終わったのか、先に口を開いた。

「お前、ヤクザモンと対等な金抜く積もりか?!」

源次さん…

助かったぞ…

僕は笑いながら言った。

「え〜 やっぱり駄目っすか?」

「当たり前だろ!」

言葉はキツイが、ダニも少し笑っていた。

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ここからは、ふざけたキャラを前面に出して値段交渉をした。

「半分下さいよ〜 女いっぱい居て大変なんすよ〜 今度二人の女に同時に子供が産まれるんすよ。どうしたら良いんすか!?」

ダニが呆れた様に言う。

「知らねーよ!お前何してんだよ!」

ダニもゴキブリもゲラゲラ笑っていた。

笑い過ぎ…

んな事する訳ねえだろうが…

お前らのレベルに合わせて話しただけだ…

夜道で後ろから襲ったろうかな…

そして交渉の結果、ダニに100万円上乗せして、300万円払う事になった。

上乗せに際して、しっかりと恩に着せるように釘をさす話し方をした。

これで充分だと僕は思った。

時間を空ければ、ダニの考えが変わる可能性や、誰かにいらない知恵を吹き込まれる可能性がある。

出来るだけ早く、確実に完全に、終わらせる必要を感じる。

「僕これから少し忙しくなっちゃうんで、明日の午前中には全部終わらしたいんですけど。借用書とかの書類、全部すぐ用意できます?金はすぐ受け取って来ますから」

「あ〜 良いぞ」

偉そうに…

「じゃあ明日の朝10時にここで良いですか?」

「あ〜 良いぞ」

ゴミ野郎…

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