「じゃあ僕帰りますね」
近いうちに、必ずダニから僕に連絡が来ると思っていた。
金に汚い頭とやらで、何が得か計算しろ…
答えは出ている…
この先、回収が不可能に近い金よりも、お前は、目先の金に必ず飛び付く…
間違い無い…
伝票を取り席を立つ。
ダニが声を上げた。
「ちょっと、もう一回座れよ…」
来た!
余りにも思い通りである。
僕は、吹き出しそうな笑いを我慢した。
「ん?何ですか?」
そう言いながら席に座った。
ダニの顔と、ゴキブリの顔が、なぜかダブって見える。
僕は既にダニを呑んでいた。
「その仕事何の仕事だよ」
「言えません。完全にカタギの仕事だから、ヤクザ屋さんには絡んで欲しく無いんです。これは相手の希望です。源次さんの機械をいじる技術に400万出すって言ってます。400出るのは、借金が全部キレイになる場合だけです」
ダニは僕を睨む事をやめない。
僕は怒りが顔に出ない様にボンヤリ見返す。
1分程の時間が過ぎた。
ダニが、痺れを切らしたのか、損得の計算が終わったのか、先に口を開いた。
「お前、ヤクザモンと対等な金抜く積もりか?!」
源次さん…
助かったぞ…
僕は笑いながら言った。
「え〜 やっぱり駄目っすか?」
「当たり前だろ!」
言葉はキツイが、ダニも少し笑っていた。
ここからは、ふざけたキャラを前面に出して値段交渉をした。
「半分下さいよ〜 女いっぱい居て大変なんすよ〜 今度二人の女に同時に子供が産まれるんすよ。どうしたら良いんすか!?」
ダニが呆れた様に言う。
「知らねーよ!お前何してんだよ!」
ダニもゴキブリもゲラゲラ笑っていた。
笑い過ぎ…
んな事する訳ねえだろうが…
お前らのレベルに合わせて話しただけだ…
夜道で後ろから襲ったろうかな…
そして交渉の結果、ダニに100万円上乗せして、300万円払う事になった。
上乗せに際して、しっかりと恩に着せるように釘をさす話し方をした。
これで充分だと僕は思った。
時間を空ければ、ダニの考えが変わる可能性や、誰かにいらない知恵を吹き込まれる可能性がある。
出来るだけ早く、確実に完全に、終わらせる必要を感じる。
「僕これから少し忙しくなっちゃうんで、明日の午前中には全部終わらしたいんですけど。借用書とかの書類、全部すぐ用意できます?金はすぐ受け取って来ますから」
「あ〜 良いぞ」
偉そうに…
「じゃあ明日の朝10時にここで良いですか?」
「あ〜 良いぞ」
ゴミ野郎…
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