僕は、この時まで、ゴキブリの兄貴分に会った事は無かった。
しかし、話しはゴキブリから聞いていた。
「兄貴は金に汚いんだよ。たまんねぇよ。すぐキレるしよ〜」
お前の兄貴じゃそんなもんだろ…
「でも頭は切れるんだぜ!」
そうゴキブリは言っていた。
源次に作戦を話してゴキブリに電話を掛けた。
「源次の事だけど、やらせるゴトがなくなったぞ。ギンパラの電波ゴトはもうキツいんだ。打ち子はもう要らない。そんで源次を使って金にする方法があるんだけど、お前の兄貴と繋いでくれよ」
ゴキブリは、しつこく、どんな方法だと聞いて来た。
「お前じゃ決められないんだよ。上手くいったら10万ぐらいお前にも小遣いやるから黙って繋げよ。源次の稼ぎが無くなったら困んだろ?」
「マジで!?なら繋ぐよ!」
「頼むわ… 言っとくけどお前、僕に協力しなきゃ駄目だよ」
「協力って何…?めんどくさい事か?」
「いや。兄貴に僕の事をホめて言っといてくれ。良い奴だとか、汚い事はしないとか優しいとか色々。それと、お前に渡す小遣いは兄貴に内緒な」
「それなら平気だ!兄貴にお前の事、悪く言った事ないぜ!」
嘘こけ…
お前は、陰で人を褒めるタイプじゃない…
クズ野郎…
その日の夜遅くに、ゴキブリの兄貴分の、ダニ、に一人で会った。
源次がゴトに手を出す前ならば、ダニなどと会う必要は無い。
破産手続きをやりながら、同時に警察に駆け込むだけで良い。
ダニは犯罪を源次に強要した事で捕まり、借金はチャラになる。
仕返しなど恐れる必要は無い。
一度警察が絡んだ事件の仕返しは、源次の命を絶つ根性や怨みが無ければ出来る物では無い。
ゴキブリに、お金に汚くて頭が切れると言われるダニには無理であろう。
損得の計算ぐらいは出来ると期待した。
源次を痛め付けた所で、お金を持っていない事を、ダニはよく知っている。
意外だろうが、お金の貸し借りで、殺されたりするのは、借りた側ではなく、貸した側の人間の方が圧倒的に多い。
追い込み過ぎて、逆切れで殺されるのである。
貸した側は、殺せば、お金の回収が出来ずに捕まる可能性が高い。
商売として、人にお金を貸す人間の思考は、損得が中心である。
キチガイは怖いが、損得計算が出来る人間は怖くない。
当然の様に例外はある。
しかしマレである。
相手がどう言う人間か、見極めるのが肝心だと思う。
相手を見極める前に、勝手に怖がってやる必要はどこにも無い。
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