「どっちが良いかは解らない。その場で自分で考えるしかない」
良夫ちゃんは即答した。
「それ言って、スキ見て逃げます」
違う…
決めちゃ駄目なんだ…
その場で臨機応変に対応しなきゃ駄目なんだ…
しかし良夫ちゃんに、ソレは出来ない。
なぜならアホだから…
「好きにしな」
僕はそれだけ言った。
どんな言い訳をしても警察が呼ばれたら言い抜け出来ないであろう。
防犯カメラは全てを見ている。
良夫ちゃんは、景品をお金に換える作業もしている。
状況を話せば最後の両替は諦めると思い、僕は大量の換金をやらせてしまった。
失敗であった。
良夫ちゃんを取り巻く現状は全てが最悪のような気がする。
店員に顔を覚えられ、数回の両替を防犯カメラに録られ、換金作業もしている。
取り押さえられたら現行犯。
言い訳出来ぬゴト師であった。
僕は良夫ちゃんの安全を考えるのをやめた。
なるようになる。
それで良い。
自分の生き残りを僕は考え始めた。
僕は両替を、やらないと言う選択も出来た。
しかし、やる事を選択した。
負けるのが嫌であった。
それだけでは無い。
良夫ちゃんに言われて、確かに勿体ないと思った…
アホが移った。
両替の可能性を考え始めてからは、方法は思い付かないが、何となくイケるような気もし始めた。
僕はツイている。
そこに、全てに目をツムッて賭けようと思った。
休憩が明ける数分前に僕はカウンターを見に行った。
先程までは、一人の店員だけであった物が、この時は三人に増えていた。
不安が広がる。
バレてんだろ…
カウンターの店員達には慌てている雰囲気が見える。
それが、ゴトに気付いてなのか、切り替わり作業に忙しいからなのかは、分からない。
怯む自分を叱咤する。
5時00分…
パチンコ屋の休憩が終わった。
カウンターの中の店員は変わらずに三人であった。
作業が終わらないのか疑っているのかは分からない。
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