仕方なくレジが締めを行った後はバレている可能性が高い事も話した。
それがどうしたと言う顔である…
僕の顔は引き攣った。
「嘘ついてゴメン…」
謝ってみた…
全く解ってくれなかった…
この人…
本物のキチガイだな…
不安になる。
更には泣きたくなる…
その後も危険について幾つも説明した。
良夫ちゃんは僕の説明をボンヤリしながら聞いていた。
僕の説明が終わると良夫ちゃんは一言だけ言った。
「怖いんですか?」
僕は、体のどこかにスタンガンでも食らったような衝撃を覚えた。
怖い…?
僕が…?
ボケジジィー!!
倒す!!
そう決めた。
【僕 VS 良夫ちゃん】戦が始まる。
嘘だ!!
やらん!
負ける!
そこに意地など無い…
狂犬病の犬の頭を撫でる奴はいない。
噛まれる!
痛い!
痛いの嫌い!
ボケ老人に煽られて踊りたくもない。
そのうえ、この勝負は、どちらにせよ僕の負けになる。
良夫ちゃんは確かに怖がらずに両替に行くであろう。
何も考えていないのだから…
紙を出せば、お金が貰える…
その程度に思っているのであろう。
限界の壁にぶつかっても止まらない。
だから捕まる時はアッサリ捕まる。
店員に囲まれた段階で、いつも終わりである。
いきなり走って逃走する。
老人が走って逃げ切れる訳もなく、毎回取り押さえられる。
あとはジタバタするだけである。
この勝負は僕にとって良い事が無い。
例え両替が上手く行ったとしても、相手が抜ける金額の少ない良夫ちゃんでは儲けが少ない。
失敗したら最悪である。
なぜか良夫ちゃんや婆さんが危険な目にあっていると僕の頭は助ける方に回転する。
理由は分からない。
手下が同じ事をすれば確実に放っておく。
笑いさえする。
この両替で良夫ちゃんが失敗すれば僕は多分助けようとする。
僕が失敗しても誰も助けてはくれない。
最後のクジは僕だけが引く事になる。
そのクジの名は、当然、貧乏クジである。
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