「2ヶ月豚箱の中に入れば借金がチャラに為ると思えば捕まるのも怖くないだろ。まあ なるべく捕まらないで借金終わらせた方が良いけどね」
源次は少し考えているように見えた。
「ゴキブリ達の仕返しとかは心配いらんよ。あいつらにそんな根性は無い。警察が一度でも絡んだ事件にヤクザは仕返しなんかしない。次は長い懲役が来る事は素人よりも詳しく知ってるからね。中には金じゃ無い部分で動く奴らも居るけど、今回は金絡みだし、ゴキブリ達には無理だ。目に見えない物は怖がる必要が無い。勝手にビビるのをアイツらは待ってるだけなんだ。金は借りてる奴の方が強いんだ………」
表情の無かった源次が笑った。
「あなたは面白い人ですね… 本当にそれが通るのかは分かりませんが、あなたの言う通りにしてみます」
面白い事を言った積もりは無い…
コイツも又、僕を可笑しい奴だと思った一人であろう…
この時もう少し源次の借金の理由と形態を聞いていれば源次はゴト師などやらずに済んだかも知れない。
殴られている段階で返済などする必要は無い。
彼が僕の身内であったなら、ゴキブリ達など倒していた。
しかし彼は赤の他人であった。
倒す気が無いのに、ゴキブリ達の飯のタネに余り手を入れるのは危険であった。
それに、源次がゴト師をやっていなければ、僕の稼ぎは8億円には届かなかった。
運命とは皮肉である…
それから三日ほど源次と二人で変造カードをやって廻った。
源次は僕が言う事を、何でも素直に聞いた。
他の手下達には見られない飲み込みの早さと理解力も見せた。
頭が賢いように感じる…
見た目も悪者に全く見えない。
ゴト師向きであった。
だからと言って何がある訳でも無い。
簡単には捕まらないと判断しただけである。
直ぐに一人でカードをやらせる事にした。
ゴキブリ達への支払いも一日2万を越えないように自分でして行くと言う。
「少しゴトに慣れたら電波ゴトもやらせるから、どっちでも好きな方を選んだら良いよ。ゴキブリ達になんか言われたら電話して来な」
しかし源次は電波ゴトの稼ぎ出す金額を知ってからも、電波ゴトをやりたいとは言って来なかった。
一日7万前後のアガリで満足しているようであった。
それに対して僕は何も言わない。
人はそれぞれである。
返済の事でゴキブリ達が僕に何か言って来る事も無かった。
相棒は、まだまだ僕の手下であった。
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