若者の目付きに一瞬殴りたい衝動に駆られた。
熱くなるな…
冷静でいろ…
そう自分に言い聞かせた。
この場を早く収拾させなければ為らない。
時間は僕の味方をしない…
もう一度白シャツに言った。
「早くしろよ。なんか言う事あんなら事務所でもドコでも行くぞ。そんときゃごめんなさいじゃ許さんけどな。この店、客が怖がって寄り付かなくしてやるよ。それと顔覚えた店員は痛い目見せてやるからな」
店員の事を言った時、白シャツの顔に動揺が走った。
白シャツの顔から強気が消えている。
おっ 弱点めっけ…
僕は携帯を取り出した。
「どうする?兵隊呼ぼうか?証拠も無い言い掛かり付けられたらいつまでも我慢してられないよ」
白シャツの意識に証拠が無いと言う事をすり込む…
「帰って良いのか?僕とトコトン揉めるか?どっちだ?」
白シャツが、悔しそうな顔をしたが、折れた。
店員に僕の玉を流す指示を手でしている。
僕は黙って、先に計量機の前に行く為、歩きだした。
ウジムシは、まだ店員に掴まれている。
白シャツが僕を追い掛けて来て言った。
「あの人も連れて帰って下さい」
僕は無視した。
僕を利用しようとしたヤクザなど捕まった方が面白い。
その為に、無理をした。
ウジムシが怖がったりしなければ、3、4日一緒に廻った後で、カードを売るだけの関係で済ました。
カードは他の奴に売るよりも高く売れるのである。
だがウジムシは怖がった。
どうせ二人はクビにする。
わざわざ、お金になる電波ゴトを休んで付き合ってやっているのに僕に無駄足を踏ませた。
捕まるには充分な理由である。
一番気に入らなかったのは、怖がりの癖にイッパシの悪党ぶって、借金で言う事を聞くしか無かったオッサンをイジメたりしている事である。
ヘボは大人しくしてろ…
そう思う。
ウジムシが怖がったせいで捕まったと言う理由さえあればゴキブリも何も言えまい。
本気でウジムシを置いて帰ろうと思っていた。
しかし僕が助かった形がウジムシを置いて帰る事を許さなかった。
白シャツは、カウンターでレシートを景品に換える時まで、無視する僕の後に付いて来て、ウジムシを連れて帰れと言い続けている。
最後には拝む勢いであった。
彼らはウジムシの処遇に困っている。
めんどくさくなった。
「仕返しなんか何もされないから、もう来ないで下さいって言って離してやりな」
捕まえる証拠など、いくらでもあるのに、使えない奴らである。
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