サンゾクが閉店して、リュウやハツコの打てる店が無くなった。
スネ夫に無理矢理、もう一店舗でカードゴトが出来るようにさせた。
渋るので打ち込む金額を二人で20万円と少なく設定して納得させた。
二人からお金を取る訳にも行かず、僕には何の儲けにもなっていない。
変造カードの期間を通じて二人程楽をした奴らを知らない…
捕まる危険がいつも余り無かった。
稼ぐ金額は、余り多くは無かったが、一日5万円は軽く越えていたであろう。
リュウは申し訳なさそうな顔をするが、ハツコなどは当然だと言う顔をしている。
イヤミを言ってみた。
「ハツコさんは、みんなに守って貰って、お姫様みたいだね」
「そうよ。 私は昔からそう言う扱いなの。 皆が私を放っておかないのよ」
そうハツコは笑わずに言った。
頭に間違いなく虫がワいているアホ女である。
余り長く話しをしていると奇声を上げ出すので危険であった。
なるべく僕は目も合わさないようにしていた。
二人きりになった時など、いつ奇声をあげられるかと思うと、僕はオドオドしてしまう。
それをハツコは、自分の事が好きだと勘違いしたりする。
全てにおいて迷惑なババァであった。
そんなハツコに、一人の男が恋をする…
その男は静かな男であった。
最初にその男と出会ったのは、サンゾクで良夫ちゃんとゴキブリの勝負が終わって、3ヶ月程経った頃である。
目の上に、殴られて出来たと思われる青タンが、色濃く出来ていた。
「そんな顔した奴、連れ廻せる訳ねえだろうが!」
その男の前に立つゴキブリに僕は吠えた。
もう一人、ゴキブリの舎弟が横に立って僕を睨むように見つめている。
「何見てんだよ。下向いてろよ!」
そう言って僕は、舎弟に一歩近づいた。
こんなヘタレ共の下手に出る積もりは全く無い。
すぐにゴキブリが舎弟と僕の間に入って謝り始めた。
「悪い悪い、昨日コイツが絞めた時に顔殴ってさ」
前の日の夜に、ゴキブリから突然電話が掛かって来た。
「二人変造カードやらして欲しいんだけど、駄目かな?」
当然断る…
ヘタレが連れて来る奴はヘタレだと、この時の僕は知っていた。
腐ってもゴキブリはヤクザである。
揉めて、行き着く所まで行けば僕が負ける。
儲けが薄ければ付き合う事は損である。
断られると知っていたのか、ゴキブリはカードの値段を、一枚3千円で良いと言い出した。
普通の手下を、6、7人連れ廻すのと変わらない儲けである。
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