電波ゴト31

毎日60万円程タケコブタに打ち込むようになって暫くすると、カード会社の注意がキツくなった。

スネ夫が直ぐに反応した。

「これはまずいよ…」

ビクビクしている。

確かにまずい…

タケコブタを潰したら婆さん達に怒られる…

打ち込む金額を下げれば、新人二人をクビにしなければならない。

妄爺に言いづらい…

30万円を5人でなどと言ったら、婆さんと良夫ちゃんに目玉を剥かれてしまう。

スネ夫には、他にも管理する二軒のパチンコ屋があったが、まだどうするか悩んでいる段階であった。

カード会社からの注意が強くなった事で、話しが消える可能性まで出て来た。

僕はイッキに追い込まれた。

やるしかない…

生贄作戦…

【ゴト師を警察に突き出して、カード会社からの疑いを晴らしちゃおう作戦】を決行する時が来た。

知らないゴト師など僕から見れば世の中のダニである…

自分の事すら、そう認識していた。

見知らぬゴト師をダニと思うのは当然であろう。

僕の座右の銘を覚えているだろうか?

【人の痛みは、100年耐える】

だって痛くも痒くもないもの!

少しはカード会社に恩返しもしたいし…

嘘ですけど!

一人を警察に突き出す程度では駄目だと考えた。

カード会社が何か言ってくる度に、生贄を捧げる事に決めた。

その為には逮捕劇は、静かに行わなければならない。

ド派手な逮捕劇になれば噂が広まるのも早い。

下手をすれば生贄がやって来なくなってしまう。

お客さん達も、度々ゴト師の逮捕劇をマの当たりにすれば、周りを気にするようになり、良夫ちゃん達が打ちづらくなってしまう。

静かなる逮捕が絶対条件である。

タケコブタの店員は、ボンヤリしている年寄りがメインであった。

その中で昼、夜、一人づつの店員は、スネ夫が話しをして僕達の味方である。

サンゾクを潰したような真似はせず、長く続ける事が僕達の望みであった。

前回ゴト師を追い出してから、日数も経っていたので、入り込んで来ているゴト師は、良夫ちゃんが確認していた。

捕まえる方法をスネ夫に伝授する。

静かなる逮捕劇の方法を伝授され、スネ夫はこれを酷く喜んだ。

出世に影響すると言う。

今は、変造カードを打ち込ませる事で売り上げも上がっている。

更にゴト師逮捕を続けられたら、役職が上がる可能性があると言う。

他の二軒も、早く変造カードが出来るようにすると言う。

お互いの利害が、全てにおいて一致していた。

思いもよらず、ピンチがチャンスに切り替わっていた。

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