毎日60万円程タケコブタに打ち込むようになって暫くすると、カード会社の注意がキツくなった。
スネ夫が直ぐに反応した。
「これはまずいよ…」
ビクビクしている。
確かにまずい…
タケコブタを潰したら婆さん達に怒られる…
打ち込む金額を下げれば、新人二人をクビにしなければならない。
妄爺に言いづらい…
30万円を5人でなどと言ったら、婆さんと良夫ちゃんに目玉を剥かれてしまう。
スネ夫には、他にも管理する二軒のパチンコ屋があったが、まだどうするか悩んでいる段階であった。
カード会社からの注意が強くなった事で、話しが消える可能性まで出て来た。
僕はイッキに追い込まれた。
やるしかない…
生贄作戦…
【ゴト師を警察に突き出して、カード会社からの疑いを晴らしちゃおう作戦】を決行する時が来た。
知らないゴト師など僕から見れば世の中のダニである…
自分の事すら、そう認識していた。
見知らぬゴト師をダニと思うのは当然であろう。
僕の座右の銘を覚えているだろうか?
【人の痛みは、100年耐える】
だって痛くも痒くもないもの!
少しはカード会社に恩返しもしたいし…
嘘ですけど!
一人を警察に突き出す程度では駄目だと考えた。
カード会社が何か言ってくる度に、生贄を捧げる事に決めた。
その為には逮捕劇は、静かに行わなければならない。
ド派手な逮捕劇になれば噂が広まるのも早い。
下手をすれば生贄がやって来なくなってしまう。
お客さん達も、度々ゴト師の逮捕劇をマの当たりにすれば、周りを気にするようになり、良夫ちゃん達が打ちづらくなってしまう。
静かなる逮捕が絶対条件である。
タケコブタの店員は、ボンヤリしている年寄りがメインであった。
その中で昼、夜、一人づつの店員は、スネ夫が話しをして僕達の味方である。
サンゾクを潰したような真似はせず、長く続ける事が僕達の望みであった。
前回ゴト師を追い出してから、日数も経っていたので、入り込んで来ているゴト師は、良夫ちゃんが確認していた。
捕まえる方法をスネ夫に伝授する。
静かなる逮捕劇の方法を伝授され、スネ夫はこれを酷く喜んだ。
出世に影響すると言う。
今は、変造カードを打ち込ませる事で売り上げも上がっている。
更にゴト師逮捕を続けられたら、役職が上がる可能性があると言う。
他の二軒も、早く変造カードが出来るようにすると言う。
お互いの利害が、全てにおいて一致していた。
思いもよらず、ピンチがチャンスに切り替わっていた。
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