電波ゴト24

後部座席にGの男を乗せ、横に僕が座った。

デコボコが運転席から、Gの男に食ってかかって来る。

「うるせえよ… 神奈川の倉庫向かいな」

そう言ってデコボコを黙らせた。

倉庫は事前に用意していた場所である。

貸しコンテナをズラリと並べた奥にある事務所の一角が、管理人もいない為使えると言う事であった。

人もほとんど来ない。

手下の身内の持ち物である。

しかし僕が勝手に先走ったので準備は出来ていない。

「車きちんと停めて来てやるから鍵よこせ」

Gの男は抵抗を一切せずに僕の言う事に従った。

車から降りた。

扉を閉める前にチャイルドロックを掛けた。

車が中から開かなくなるスイッチである。

ほとんどの乗用車に標準装備されているのではなかったか…?

外の気配におかしい所はない。

悲鳴に気付かれてはいないように感じた。

GTRをきちんと停め直して、手下の一人に電話を掛けて状況を話した。

驚く手下に倉庫を使えるようにする事を頼んで、みんながすぐ動けるようにして措くよう指示を出した。

まだまだ終わっていない。

後三人いる…

車の中でGの男にいくつもの質問をした。

「誰が道具持ってんだ?」

一つ上のリーダー格の先輩で、デコボコを襲う作戦も全てソイツが立てたと言う。

ゴト師をやっているのは、リーダーとGの男だけである。

後の二人は襲撃に際して急遽呼び出したと言う。

ここまで聞き出すのにGの男は答えを何度も躊躇った。

答えを躊躇う度に、鼻に拳を叩き込んだ。

先程まであった同情の気持ちは消えて、酷く残虐な気分になっている自分がいた。

木刀なら死ぬ。

素手なら死なない。

それが僕の中での境目のようであった。

千葉県から神奈川県の倉庫までは高速で1時間掛からず、途中で4人の手下と合流して着いた。

高速を降りた所でGの男に目隠しのタオルを巻いた。

倉庫の奥に入り、車から降ろしたGの男の血だらけの顔を見て、手下達は驚いている。

いつもヘラヘラして暴力に無縁のような僕に驚いているのであろう。

Gの男は、足の痛みで一人で歩く事も出来なかった。

すぐにリーダーを呼び出したかったが時間が遅すぎる。

騙しておびき出そうと決めていたので変に疑われたくはない。

夜が空けるまでの時間がひどく長く感じた。

朝10時過ぎまで、リーダー格の男を電話して呼び出すのは待っていた。

その間に残りの手下達も集合して僕達側は8人になった。

Gの男は自分がどうされるのか分からず、人が増える度に不安でいっぱいの顔をしていた。

手下が調子に乗って彼を脅かしたりするので、僕の車に隔離して二人で話しをした。

もう充分縮み上がっている。

これ以上、脅かす必要は無いと思った。

Gの男と話しをしていく中で作戦は変えた。

リーダー格の男以外は見逃す事にした。

ただのバイトとして集められた奴らであった。

デコボコに聞いても、手を出して来たのはGの男とリーダー格の男だけだったと言う。

「なら二人は勘弁してやる。ただリーダーだけは許す訳に行かないから、お前も協力してキッチリ呼び出せ。疑われて呼び出しに失敗したらお前は裏の空き地に埋める」

完全なハッタリだったが、Gの男は少し信じたようである。

10時過ぎにGの男に缶コーヒーを渡して聞いた。

「普通に電話出来るか?」

「はい、出来ます… 電話したら帰してくれますか?」

「上手く呼び出せたらな」

得意の嘘であった。

まだ、お前には、絶望を味合わせていない…

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