電波ゴト12

自分から飛び込んだ鴨なのである。

リカちゃんを自分で引っかけたと勘違いしている男は、何の疑いも無くリカちゃんにすすめられるままに酒を飲んだ。

そして意識が失くなった。

ここまでがリカちゃんの仕業である。

店の人間が財布からお金を抜いた。

そして意識不明の男を下着だけ残して近くの道端に放置した。

季節は冬と言う程寒い季節では無かったと言う。

結果は最悪であった。

警察の捜査の結果カノウの店は捕まった。

しかし法律が、罪に見合って彼らを裁く事は無かった。

男達は警察に逮捕となったが、結果に比べ軽い罪を受けた。

信じられない事にリカちゃんには、お咎め無しであった。

僕が言える事では無いがこの国の法律に絶望を覚える。

後に法律か条令が厳しくなって重い罪になるようにはなった。

歌舞伎町からナンパが減っていく結果にもなった。

それでも今だに田舎者がナンパしているのを歌舞伎町で見かける。

気をつけなければいけない。

人では無い魔物が住まう街である。

油断が命を落とす事さえ有り得る。

リカちゃんと知り合って一年ほど後にこの話しを聞いた時、リカちゃんは既に僕達のゴトに深く食い込んでいた。

切れない関係が続いていく…

コイツだけは許せない…

だからお前は一度死んだんだ…

生き返る必要など無かったんじゃないか?

少し前に起こっていた事件を振り返り、僕はそう思った。

しかしゴト師などやろうとする人間は多かれ少なかれこのようなクセのある奴らばかりである。

僕をも含めて、ゴト師など、決して信じたり認めるような事があってはいけない。

僕はそう思う…

リュウとの話し合いでギンパラの道具は僕の手下に貸す事が決まった。

リュウがギンパラの道具を集める。

僕が人を集める。

道具代は二人で出し合った。

道具のレンタル代は四万円に決めてリュウと折半にした。

リュウは、道具を使う人間に見張りを付けてアガリの半分を取るのが普通だと言う。

そうする事で道具の持ち逃げも防げると言う。

「日本のヤクザはみんなそうやってるアルヨ」

情報がまだ、パチンコ屋に広がっていなかったので、この道具を使うと一日二十万程には軽くなる。

しかしそこまでの管理をする事に無駄を感じた。。

やる気になれば何でもやる奴らなのだ。

ルールが存在しない、人で無しの群れである。

この頃から僕は危険なゴトに自分からワザと突っ込んで行くようになった。

手下に舐められたら終わりである。

カードが安いだけでは言う事を聞かせられない。

情報や腕や、根性の違いを見せ続けなければ手下に喰われる。

抜き屋になって小池のように暮らす事は、なぜか出来なかった。

ギンパラ用の一台目の道具は僕が使う事にした。

僕には変造カードとハーネスのゴト経験しかない。

不安は多少あった。

しかしパチンコ屋の中に入った瞬間不安は消し飛んだ。

日常と何も変わらない風景である。

一年を越えてゴトを毎日やり続けていれば、大概の危険な目には遭って来ている。

扱う道具が違うだけ…

捕まる時は何をしていても捕まるんだと半分諦めていた。

今日だけでは無い。

毎日半分は諦めていた。

残りの半分で生き残る道をさがす。

そんな日常であった。

体には既に道具を装着している。

右手にはVUITTONのセカンドバック…

嫌じゃ…

紙袋にしようか一瞬迷ったぐらい嫌であった。

リュウの説明では、このバックがドル箱の中にピタリと納まると言う。

箱に納まるならそれ程不自然では無いと思った。

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