変造カードが飛ぶように売れ、自分の想像を越えたお金が、毎日入るようになって行った。
細かい収入は覚えていない。
しかし月の平均にすると、変造カードの取引だけで二千万円は越えていた。
青いポリバケツには入り切らず、銀色の少しこ洒落たゴミ箱を買った。
一度いくらあるのか数えようと思った事がある。
部屋のフローリングの上に、バケツから取り出して、数えたお金を積んで行った。
五千万円を越えた所で右手に異常な痒みを覚えた。
構わず数え続けたら、右手の指がパンパンに腫れあがっている事に気が付いた。
カブれた!
なんかにカブれた!!
やべー!!
それ以来お金を数える事はやめた。
それからは目分量である。
ぱっと見、三億円はあると見た。
数えた時期も思い出せない。
ただ、フローリングのある家だった事は記憶している。
変造カードの終わりと共に、僕はその家を引越した。
そう言う事である…
やばい…
8億円に届かない!
どうする僕!
僕は妄爺のお店で変造カードをやりたいと言う奴らを育て始めた。
その数は変造カードが終わるまでに30人を越えた。
さらにその30人が、仲間を誘って変造カードをやるようになって行く。
末端まで行くと、どれぐらいのゴト師がいたのかはハッキリ掴んでいない。
僕は自分が育てた30人としか、なるべく接触しないようにしていた。
ヤバイと思う奴の間には必ず人を立てるようになった。
巻き添えは嫌である。
変造カードゴトは捕まって裁判まで行くと懲役1年6ヶ月、執行猶予3年と言うのが相場であった。
懲役と言うのは刑務所に入る期間。
執行猶予とは刑務所には入らず、その期間警察の厄介にならなければ刑務所を免除すると言う物である。
しかしこれは初犯の場合である。
今まで警察に捕まるような事をした事が無い人は、変造カードで捕まっても刑務所には入らないと言う事であった。
例外はある。
当然のように前科は付く。
執行猶予期間の3年以内に、警察の厄介になる罪を犯せば、その際の刑期と先の1年6ヶ月が足された重い罪になる。
二度目はほとんど執行猶予が付かず刑務所に入る結果になる。
今現在は、ゴト師に対して、もっともっと重い罪になっている。
死刑は無い。
警察に捕まっても喋らなければほとんどの場合が執行猶予になっていた。
人の繋がりを喋ると他の罪もくっついて刑が重くなるのが変造カードの特徴であった。
それなのに警察まで行くと喋る奴は沢山いた。
喋るか喋らないかは普段の付き合いの中では分かりづらい。
アイツが喋ったのかと思うような奴でも普通に喋る。
しかしゴトを一緒にやって、コイツは良い根性をしていると思った奴は、例え捕まっても笑いながら帰って来た。
不思議と、根性と喋る確率は比例していた。
良夫ちゃんは喋らない。
小池やゴキブリは喋る。
そう言う感じである。
なので僕の中にはきちんとした線引きがあった。
良夫ちゃんタイプにはカードを安く卸す。
小池タイプには高く卸す。
怖がる奴を遠ざけて、怖がらない奴を近くに置く。
保身である。
僕はヘボいのである。
自分のドジなら諦めも付くが、人のドジでは泣けてしまう。
泣くのは嫌なのである。
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