電波ゴト1

婆さんが菓子折りを渡して、お辞儀をしている。

その時のスネ夫の慌て振りはネズミのように見えた。

どう対処して良いのか分からなくなったようである。

あんまり賢くないな…

突っぱねるのが、正解だろ…

慌てたスネ夫は、菓子折りを受け取ると、婆さんの挨拶から逃げるように事務所へ引っ込んだ。

僕は吹き出しそうな笑いを堪えて外に出た。

キモの小さい奴だ…

無理だな…

期待もせずに婆さんに聞いた。

「なんて言って話し掛けたの?」

「挨拶して、今日お話しがあるからお時間頂けませんかって言いました」

「返事なんて言ってた?」

無駄とは知りながら聞いた。

何も会話は無かったように見えた。

「なんか慌てて事務所に戻ったのよ」

失敗だな…

「後で、後で、ばっかり言ってた。後っていつかしらね」

後で、か…

あの場を逃げる為のでまかせだよ…

帰り道待ち伏せするかな?

後でって言われたから来ました…

最後にそれぐらいのチャンスはやるか…

出来るなら普通に打ちたい。

僕はそう思った。

張り込みを開始する。

僕にはスネ夫が何時に帰るか分からなかった。

「帰るの待ち伏せしよう」

そう二人に言った。

すると二人はスネ夫の行動を知っていた。

婆さんが言う。

「じゃあスネ夫さんの車の前に良夫ちゃんの車止めましょ。いつも8時頃に帰るから」

婆さん達は、僕がサンゾクでやっている頃も5時にはスネ夫の店を出ていたはずである。

「え?なんで知ってんの?」

良夫ちゃんが何度も忘れ物をして、取りに帰った時、見かけたと言う。

不思議と二人のボケは役にたつ事が多かった…

そして何の作戦も無いままスネ夫の退社を三人で待った。

夜8時過ぎにスネ夫が一人で外に出て来た。

帰るように思われた。

婆さん達を車から最初に下ろして僕も降りた。

スネ夫はすぐに僕達に気付いて立ちすくんでいる。

なんだ…

やっぱり、ただのビビりか…

婆さん達に、ここで待ちなと言って、スネ夫に向かい僕は歩き出した。

スネ夫が少し後ずさる。

「お母さんに後で話しがあるって言ったみたいだから待ってたんですけど…」

「え〜?言ってないよ」

スネ夫は震えそうな感じであった。

口を曲げて笑う余裕は無いように見える。

「え?言ってない?しょうがないなぁ〜 お母さんいつもこうなんだから…」

二人の方を振り返ると婆さんがお辞儀をしている。

スネ夫から少し緊張が抜けたように見えた。

「少し話しがしたいんですけどダメですかね?」

そう僕は聞いた。

「困るんだよね。こう言うの…」

「でもこのままだったらカード会社に睨まれますよ。睨まれない方法を、僕知ってるけど… ここで話してんのまずいからファミレスでも行きませんか?10分ぐらいで済みますから。お店はどこでも良いです」

僕は返事を待った。

スネ夫はタップリ2分は悩んだ…

なんだ?

コイツ?

僕にとって始めてみる人種であった。

僕達と向かい合ってるいのを、お客さんに見られる方がまずいだろ…

頭が回らないのか?

返事が遅いので僕の知っている近くのファミレスを言ってみた。

「そこはまずいよ…」

そうスネ夫は言った。

は?

場所の問題か…?

少し離れたファミレスを言ってみた。

「場所はそこで良いけど… でもなぁ〜」

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