しかしそれにも限界がある。
自分が打っていられない…
なんのこっちゃである。
更にはゴト師の数が多過ぎた。
一人追い出しても仲間が居て、僕が変造カードをやっているのを確認されれば、間違いなく喧嘩になる。
喧嘩に勝てれば、ソイツらの財布ごと頂けるのだが、負ければ逆の目に遭う可能性が高い。
それに、それはゴトでは無い。
ゴートーだ!
しょせん泥棒なので警察に訴える事は無いだろうが…
スネ夫に頼みたい事は僕が見つけたゴト師の追い出しである。
それによって打ち込まれる金額のコントロールが出来る。
スネ夫にしても助かるのでは無いかと考えた。
追い出し方の指導も出来る。
カード会社に対する言い訳の為に、ゴト師を警察に突き出す事もできる。
カード会社のマークから外されたなら打ち込む金額も上げられる。
問題はスネ夫とのコンタクトの取り方だった。
スネ夫が僕達を見逃したのは、婆さんと良夫ちゃんが年寄りで、弱そうに見えたからである。
僕はそのオマケだ。
そのオマケが出て行ってスネ夫は話しを聞くだろうか?
何ヶ月もの間、婆さん達とすら言葉の交流が無かったのに…
最初の一声が難しいと思った。
僕は犯罪とは無縁のような見た目をしている。
喋り方や態度もそうである。
周りの人はよく言った。
「悪い事する奴には全く見えない。逆に正義の人に見える。でも、お前が一番悪い。悪魔のようだ」
少し付き合っていると同じようなセリフを殆どの人が言った。
失礼だろ!!
なのでスネ夫に喋りかけても怖がられる事は無いと思う。
婆さん達を同伴して喋り掛ければ、イケるような気がする。
本当なら婆さんか良夫ちゃんに行って貰いたい…
しかし、ボケボケが行ったら話しがボケそうで不安であった。
とりあえず婆さんにスネ夫を呼び出させるか…
嫌がらないかな…
「はい分かりました。誘って来ます」
説明も殆どしない内から婆さんは行くと言う。
不安以外の何物でも無い。
スネ夫の店が、終わる覚悟はするしか無かった。
次の日にスネ夫が僕達を帰らせる為、首をフリにホールへと出て来た。
それを確認した婆さんは、菓子折りを持ってスネ夫に近づいた…
止めたんだ…
菓子折りやめろって…
「お世話になってるんだから。せっかく買ったし」
そう婆さんは言った。
違う!
世話などでは無い!
スネ夫は僕達と組んでいる事を、自分で認めたくないんだ。
自分は悪人ではないと信じていたいんだ。
何かあった時の言い訳を用意して措きたいんだ。
僕達と直接接触しなければ、勝手にやられましたと言えると勘違いしてるんだ。
自分をゴマかしていたいんだ。
僕達に、たまに見せる、口をひん曲げた笑いが全てを物語っている。
卑怯…
卑屈…
小心…
自分が賢いと思っている…
そう言う奴なんだ。
婆さんには通じない、僕の考えであった。
「見逃してくれるんだから良い人よ。お礼しなくちゃいけないと思ってたの」
そう婆さんは言った。
なぜか凄く嫌だった。
その時ひとつ思いついた。
この店、潰してやろうかな…
婆さんが誘って、スネ夫が出て来なければ、やってやろうと決めた。
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