偽造品・変造カード36

良夫ちゃんも理解した。

三個入れる所は、一発づつ打ち出せば、チョコチョコ開く小口チャッカーが玉を簡単に拾う。

守りが居る今の状況なら楽な物だろう。

店員は守りの五人に任せて、出し続けろと伝えた。

「守りなんていりませんよ。店員、もう諦めてます」

そう良夫ちゃんは言う。

え?

そんな馬鹿な…

忍法偶然を僕は知らなかった。

いくら呼び掛けても寝たふりを続ける良夫ちゃんに呆れ、この時既に、店員は諦めていたと言う。

守りに入った五人からも、店員は見てるだけで何も言って来ないと連絡が来た。

ゴキブリ何やってんの?

アイツがヤバいって言ったのに…

すぐにゴキブリを電話で呼びだした。

「お前なんでセットしないの?店員平気らしいじゃねーかよ!ふざけんなよ!」

立って見ている店員が、どうのこうのと言っていた。

ゴキブリのヘタレ嘘のおかげで、五人分の日当を損こいた。

僕に損をさせた罪は重い…

「5%は貰うからな。それと五人分の日当も取るからよろしくな。早くセットしないと払いが出来なくなるぞ。頑張れよ」

そう言って、僕は電話を切った。

良夫ちゃんに僕の助けなど必要なかった。

ビビッて空回りしていたのは僕の方なのだ。

僕はやっぱり怖がりなのだろう。

この後は何の障害もなく、閉店間際まで良夫ちゃんは箱を積み上げて行った。

閉店間際に、僕は一度、帽子を被り店内を見に行った。

遠間から見た良夫ちゃんは、ドル箱の山に埋もれていた。

店員が良夫ちゃんの面倒を見ないのであろうか、五人組が箱の整理をしている。

その光景を、遠巻きに見る沢山のお客さんの肩越しに、僕はハッキリと見た。

勝てない…

やり合えば負ける…

そう僕は思った。

手前に見えるゴキブリのドル箱は、良夫ちゃんの半分ほどに見えた。

チラリと僕を見たゴキブリの目の中に、消し切れなかった、恐怖がのぞいている。

その目を見た時、先程までの怒りは消えていた。

ゴキブリが、なぜか僕の分身に見える。

コイツしょうがねぇなあと思うと、ゴキブリに笑い掛けていた。

恥ずかしそうに笑い返すゴキブリに、調子に乗るなよと伝えるニラみをくれて僕は外へ出た。

リュウや婆さんやハツコが、なにが楽しいのか嬉しそうに三人で笑っていた。

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