「はぁ? そんな事ねぇよ。やめたいの?少し怖い?」
そう僕は聞いた。
「そうだな… 少し怖いな…」
「そうか。アンタ震えてたもんな… 良いよ。車にいなよ。僕達はもう少しやってくるから…」
それだけ言って僕はホールに戻った。
クビ決定!
いらねぇ…
あんな奴。
馬鹿にされて、喧嘩も出来ない奴が、ドコがヤ◯ザだ…
笑わせんな。
それから三時間程、新人君と普通に打った。
そろそろ帰るかと考え始めた頃に、ゴキブリが僕から少し離れたパチンコ台に、カードを入れて打ち出した。
10分後…
「帰るよ」
そうゴキブリに声を掛けて、ゴキブリを待たずに、新人君と二人でホールを出る。
慌ててゴキブリも店を出て来た。
ゴキブリは、何かあれば僕が助けてくれると思い、僕の近くの席に座った…
相手にするのもカッタルい。
その日、新人君と別れてゴキブリに、すぐに言った。
「やめた方がいいよ。あんなんじゃ捕まるから。脇坂には僕から言うかい?自分で言うかい?」
ゴキブリは、シドロモドロで、もう一日だけやらしてくれと言った。
あー ウザい…
一般の悪い事をした事がない人間が、ゴトを初めてやって震えるのは理解出来る。
こそ泥を、ゴト師などと呼び名を変えているだけで、やっている事は泥棒なのである。
罪の意識に震えるのだろう。
しかしヤ◯ザ者が震えるのは理解出来ない。
罪の意識?
ヤ◯ザが?
こそ泥で捕まると仲間の組員に笑われるからか?
違う。
根っこが根性無しなのだ。
全てハッタリで生きて来た証明なのだ。
ヤ◯ザとしてもゴキブリのような奴は使い物にならない。
せいぜい鉄砲玉か?
いや…
「あいつ殺して来い!」
そう言われ、打ち出されたゴキブリのような玉は、どこへ飛んで行くのか分からない。
あさっての方へ飛んで行き、組に戻る事など無いだろう。
出来る事は身代わりの懲役要員ぐらいか?
それすらも怪しい。
苦手な事なら最初からやらないと言う選択をすれば良い。
しかし、やると決めた以上、怖いは許せない。
ゴキブリの様に、底を見られた奴は、誰一人僕に逆らわなくなって行った。
次の日から、仕方なく、ゴキブリと婆さんと良夫ちゃんの四人で、ホール廻りをした。
三日程経つと少し慣れて来たのか、ゴキブリは普通に打つようになった。
しかし土壇場ではボロが出るだろう。
僕はゴキブリに威張り散らしたり、偉そうにしたりはしない。
普通に接している。
なのに僕に対するゴキブリの態度は、まるで舎弟のように変わっていた。
ヤ◯ザがゴト師の舎弟のようになる。
そのストレスは計り知れない。
ストレスはどこかで必ず発散される。
標的がいた。
ショック!
良夫ちゃん!
僕の見ていない所でゴキブリにイジメられていた。
良夫ちゃんはヤ◯ザなどの肩書に弱かった。
ゴキブリを紹介した段階で既に負けていた。
怖がって貰えたヤ◯ザ者は強気である。
ビビらされて半ベソになった良夫ちゃん…
しかし良夫ちゃんには男気と言う物がなかった。
すぐ僕にチクりに来た。
「あの… 脅かされました」
「は? 誰に?」
そう僕は聞いた。
「あのヤ◯ザさんです」
ブチッと切れた。
理由を聞いても良夫ちゃんは悪くない。
許さん!
ゴミヤ◯ザ!!
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