偽造・変造カード28

「はぁ? そんな事ねぇよ。やめたいの?少し怖い?」

そう僕は聞いた。

「そうだな… 少し怖いな…」

「そうか。アンタ震えてたもんな… 良いよ。車にいなよ。僕達はもう少しやってくるから…」

それだけ言って僕はホールに戻った。

クビ決定!

いらねぇ…

あんな奴。

馬鹿にされて、喧嘩も出来ない奴が、ドコがヤ◯ザだ…

笑わせんな。

それから三時間程、新人君と普通に打った。

そろそろ帰るかと考え始めた頃に、ゴキブリが僕から少し離れたパチンコ台に、カードを入れて打ち出した。

10分後…

「帰るよ」

そうゴキブリに声を掛けて、ゴキブリを待たずに、新人君と二人でホールを出る。

慌ててゴキブリも店を出て来た。

ゴキブリは、何かあれば僕が助けてくれると思い、僕の近くの席に座った…

相手にするのもカッタルい。

その日、新人君と別れてゴキブリに、すぐに言った。

「やめた方がいいよ。あんなんじゃ捕まるから。脇坂には僕から言うかい?自分で言うかい?」

ゴキブリは、シドロモドロで、もう一日だけやらしてくれと言った。

あー ウザい…

一般の悪い事をした事がない人間が、ゴトを初めてやって震えるのは理解出来る。

こそ泥を、ゴト師などと呼び名を変えているだけで、やっている事は泥棒なのである。

罪の意識に震えるのだろう。

しかしヤ◯ザ者が震えるのは理解出来ない。

罪の意識?

ヤ◯ザが?

こそ泥で捕まると仲間の組員に笑われるからか?

違う。

根っこが根性無しなのだ。

全てハッタリで生きて来た証明なのだ。

ヤ◯ザとしてもゴキブリのような奴は使い物にならない。

せいぜい鉄砲玉か?

いや…

「あいつ殺して来い!」

そう言われ、打ち出されたゴキブリのような玉は、どこへ飛んで行くのか分からない。

あさっての方へ飛んで行き、組に戻る事など無いだろう。

出来る事は身代わりの懲役要員ぐらいか?

それすらも怪しい。

苦手な事なら最初からやらないと言う選択をすれば良い。

しかし、やると決めた以上、怖いは許せない。

ゴキブリの様に、底を見られた奴は、誰一人僕に逆らわなくなって行った。

次の日から、仕方なく、ゴキブリと婆さんと良夫ちゃんの四人で、ホール廻りをした。

三日程経つと少し慣れて来たのか、ゴキブリは普通に打つようになった。

しかし土壇場ではボロが出るだろう。

僕はゴキブリに威張り散らしたり、偉そうにしたりはしない。

普通に接している。

なのに僕に対するゴキブリの態度は、まるで舎弟のように変わっていた。

ヤ◯ザがゴト師の舎弟のようになる。

そのストレスは計り知れない。

ストレスはどこかで必ず発散される。

標的がいた。

ショック!

良夫ちゃん!

僕の見ていない所でゴキブリにイジメられていた。

良夫ちゃんはヤ◯ザなどの肩書に弱かった。

ゴキブリを紹介した段階で既に負けていた。

怖がって貰えたヤ◯ザ者は強気である。

ビビらされて半ベソになった良夫ちゃん…

しかし良夫ちゃんには男気と言う物がなかった。

すぐ僕にチクりに来た。

「あの… 脅かされました」

「は? 誰に?」

そう僕は聞いた。

「あのヤ◯ザさんです」

ブチッと切れた。

理由を聞いても良夫ちゃんは悪くない。

許さん!

ゴミヤ◯ザ!!

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