偽造・変造カード25

こうして僕達はサンゾクの閉店を指をくわえて見ている事になった。

そんな訳は無い…

ここまでバレる事なく、コソコソと継続させて来たパ〇フルが二台残っている。

店が閉まると同時に、ゴミになるハーネス…

ただで捨てる訳がない。

サンゾクに最後っ屁をかます魔法の道具。

別段サンゾクに怨みは無い。

怨まれるのは僕の方である。

僕と組んだ事により店まで閉まる。

哀れなる社長…

しかし初めてハーネスでの出玉の限界に挑戦出来る。

一度は見てみたかった。

止まらぬ連チャン…

溢れる出玉…

積み上がるドル箱…

出す気さえあれば限界のないハーネス…

トドメは僕が刺す!

そう決めた。

「打ち子僕行くかな」

リュウに却下された…

当たり前だった。

途中で店側に止められる可能性が高い…

分かってるわ!

ウザいリュウ…

今回の打ち子の条件……

折れない心。

引かないガッツ。

お金に対する貪欲さ。

猿程度の知能…

思い当たる奴がいた。

決して、ツルッパではない。

そう!

我らが良夫ちゃんだ!!

ここで行かねばドコで行く!

問題は良夫ちゃんにはサンゾクでの逮捕歴がある事…

「出した分の40%あげるよ」

「はい 行きます」

全く悩むと言うフリすら無く良夫ちゃんは即答した。

プッツン健在なり。

僕が唯一敵わないと認めた男。

それが良夫ちゃんだ!

「一回捕まってるけど平気かな?」

そう僕は良夫ちゃんに聞いた。

「大丈夫です。変装しますから」

変装…

僕は良夫ちゃんの変装を知っていた…

忘れもしない。

あの暑い、真夏の昼下がりの事である…

もの凄く変造カードのやりやすい店があった。

ほぼ毎日行っていた。

店員が、全てボケた感じの人ばかりの店であった。

上皿に変造カードを置いていて、あろう事か良夫ちゃんがお客さんに疑われた。

店員にチクりに行かれ、それには気付いて逃げたのだが、良夫ちゃんは打てなくなった。

僕は少し怒った。

「何やってんのよ。だから言ったじゃん!」

すると良夫ちゃんは言った。

「平気ですよ。変装して来ますから。打ってて下さい」

変装?

この時もそう思った。

なんか変装グッズでも持ってるのかな?

そう思い、打ちながら暫く待った。

この日の良夫ちゃんのカッコは、紺色のスラックスにチェックの半袖シャツだった。

10分後…

足元は黒い革靴…

下が緑のジャージ…

上が長袖の白いシャツ…

顔には浜崎あゆみが掛けるような大きな丸目のサングラス…

頭にはヤクルトスワローズの帽子…

「嘘だろ…」

独り言が出た…

チンドン屋か?

サングラスで目元は見えなかったが、口元をニヤリとさせた良夫ちゃんが、僕の台の横を、風のように颯爽と通り過ぎた。

そして良夫ちゃんが座った台は、あろう事か先程疑われたお客さんの隣り。

後に僕は聞いた。

「なんで疑われた客の横座んの?」

当然のように良夫ちゃんは答えた。

「あの台ずっとハマってたから、そろそろ出ると思って」

え?

大事なのそこか??

驚く事に、この変装はバレなかった。

変な奴には見られていたが…

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