偽造・変造カード22

待ち合わせたファミレスの席で小池は笑って言った。

「警察に届けるって散々脅かされましたよ!」

もっと青い顔をしていると思っていたので、少し安心した。

捕まっても社長は多分警察を呼べないと教えてあった。

話しを付けて、変造カードをやらせていた事は、小池も知っているのである。

下手に喋られれば社長も捕まる。

取り付けた経緯と僕達の絡みを一番しつこく聞かれたと言う。

馬鹿でもそこは気付く。

しかしこれに対しての答えは用意出来なかった。

誰からハーネスを仕入れたのかや、打ち子をどうしたのかを聞かれて上手い言い訳はない。

何を言っても突っ込まれれば嘘がバレる。

知らない、忘れたと答えて後は黙れと教えた。

下手な嘘をつかせれば小池はドジると思っていた。

小池は、ここを良く乗り切った。

「必死でしたよ〜 ツジツマが全然合わないんですもの〜」

そう得意げに小池は言った。

社長は僕を完全に疑っているそうである。

それは最初から分かっている事であった。

小池が喋っていない以上、問題は何もない。

当然最後は抜いた金額の弁済の話しになった。

ここまで僕が教えた通りに事が運んでいたので、小池は警察を呼ばれない事を確信したと言う。

「金の話しが出たら貧乏だから金無いって言え。 どうしても払えって言うなら警察呼んでくれと言って、カードの事も喋ると脅かせ」

そう僕は小池に教えていた。

警察を呼ばれない確信があった小池は、そのままを言った。

結果クビで放り出された。

今月の給料は出さないと言われている。

「それぐらいで済んで良かったんだ」

そう言って三十万円程を小池に渡した。

サンゾクなんか僕の敵ではない…

コスイ悪知恵なら誰にも負けない気がしていた。

小池は仕事が無くなったので、変造カードを一緒にやりたいと言う。

考えるまでも無く断った。

怖がりにゃ無理だ…

周りでは沢山の変造カードゴト師が捕まり始めていた。

少し小池の人生を僕が変えてしまった。

なにはどうあれ僕は小池を喰いものにした。

何かしてやれる事はないかと考えたが、怖がりにさせられる事は思い付かなかった。

仕方なく僕は言った。

「喋らないで頑張ったから卸してるカードの値段100円下げるよ」

根がセコいので100円だけ下げた。

それでも小池は喜んでいた。

月に三十万円は小池の儲けが増える計算である。

「カードが売れている間に仕事探しなよ。もうすぐカード終わるよ…」

「終わられると困るんですよね。車のローンもあるし」

それだけではない…

小池はキャバクラに狂い始めていた。

完全に色恋営業に踊らされている小池は、まるでマリオネットのようで笑える。

ゴトを離れて小池を見ると、彼は普通の20代の男であった。

この時僕が、小池との付き合いをハッキリ断っていれば、小池はまだやり直せていただろう。

しかし断りづらかった。

カードの取引もあった。

何者かが小池を不幸へと引き吊り上げて行く。

それは僕だったのかも知れない。

小池自身の欲望だったのかも知れない。

それは僕には分からない。

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