ハーネス取り付けから一週間経って、リュウとハツコはサンゾクで変造カードを打つ為に復帰した。
二人だけなら警察の内偵など敵では無い。
ホールで不自然な動きをするお客さんなどいるはずが無いので、見回る刑事が居れば簡単に気付く。
そう安易に考えた。
同時にハーネス台のゴトを始める。
打ち子の管理を任せたので、カード代だけで二人には好きに打たせた。
店員には、二人が少し小遣いを渡すと決めたようである。
ハーネスの打ち子はリュウが適当に連れて来る事になっている。
問題は、いくら出すかであった。
一日十万円出すとサンゾクから抜く分は月に三百万円になる。
僕の取り分が百二十万円。
リュウが四五万円。
小池が十五万円…
しかしどう考えても抜く金額が多いような気がする…
お客さんがいないのである。
「やばいだろ?」
そうリュウに聞いた。
「店によるよ。バレる時は一週間もたなイ」
一週間…
余りに淋しい…
あんなに震えたのに…
バレるのは金額の問題だけでは無く、情報を店側がどれだけ知っているかに掛かっているとリュウは言う。
打ち子に渡す取り分の事もあるので余り出さない訳にも行かない。
ホールまで来た以上、三万円は渡さなければならないであろう。
段々どうでも良くなって来た…
とりあえず一日一台を使い、十万円からスタートさせた。
危険と言われた一週間は問題なく過ぎた。
10日も経つとリュウが言って来た。
「情報は知らないみたいだヨ。問題なく出来てる。でも見た目でバレるかも…」
そりゃそうだ…
お客さんがほとんど来ない列で、10回出てる台がほぼ無いのに、ハーネスの二台は、交互に大当たり回数が20回を越えるのである。
「二日に一回にするカ?」
儲けが半分になる。
完全にどうでも良くなった。
興味なし!
「お前に任すよ。好きにしてくれ」
そうリュウに言った。
更に10日も経つとリュウがまた言った。
「少し台休ませるか?」
知らんがな…
好きにしてくれ…
アホくさい…
二度とやるか…
聞く度に損した気分になった。
リュウは台を休ませる事に決めた。
一週間ほど一円も抜かないで放っておくと言う。
ここで納得出来ない一人の男が、敢然と立ち上がった!
そう!
トイレばっかり小池君だ!
「もっと出して下さいよ〜」
そう僕に電話で言って来た。
黙れ…
ヘタレが…
バレて一番困るのはお前なんだ…
小池は派手な暮らしが祟って貧乏になりそうになっていた。
パチンコ屋の寮を出て、マンションを借りたりしている。
更には予約した車の購入も近い。
「二台しか取り付けて無いから無理だよ」
適当に答えた。
お前の儲けなんか知るかと思う。
怖がるくせに欲だけは張っている奴だ…
「ハーネス増やしたらどうですか?」
軽く、そう小池は言った。
「お前がやんのか!おい!」
ついキレた。
しどろもどろで小池は電話を切った。
それから更に10日程が経った。
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