組織犯罪の始まり23

しかしカバーの外側と言うのはメリットもあるがデメリットもある。

封印の付いているカバーはホール側が開けても違法になる。

なので多少疑わしくてもホール側は簡単には開けたりしない。

ハーネスは噂が広まると、取り付けヶ所がカバーの外側なので、簡単に取りハズしされてしまう。

バレやすいと言う事である。

裏ロムとハーネスどちらを取り付けたら長く出来るかはハッキリ言えない。 

ホールのゴトに対する対策にもよるし、取り付ける人間の都合にもよるからである。

僕としてはサンゾクに取り付ける道具は裏ロムが良かった。

現状で変造カードの打ち込みを、店側と話しを付けてやっている以上、絶対にバレる訳には行かない。

ハーネスは取り付け後、数日でバレる事がよくあるとリュウは言う。

店側が情報を知っていれば発見されるのは早いのである。

発見されればオーナーは僕を当然疑うだろう。

このショボイ儲けの為にカードの方を危険にさらす訳には行かなかった。

下手をすれば歯抜けまで介入してくる。

僕の置かれている状況が、ハーネスよりもバレにくい裏ロムを選択していた。

三日程のちの深夜、僕は段ボールで梱包された二台のパチンコ台をビジネスホテルに持ち込んだ。

このホテルはサンゾクの打ち子達がよく利用しているホテルであった。

そこに僕とリュウと小池が集まった。

小池にはハーネスの話をまだしていない。

小池の裏ロム取り付けの教習がリュウによって始まる…

はずだった…

「あの~やっぱり怖いんですよね~」

そう小池は照れ笑いで言った。

リュウがすぐに反応した。

「ハ?!何この日本人照れ笑いで言ってる?馬鹿アルカ?」

黙れ…日本人を馬鹿にするな…

「コイツ、面白いアルヨ~」

笑うリュウ…笑うな…

なんか僕まで恥ずかしい…

仕方なく小池に聞いた。

「怖いって…やらないって事?」

笑われた小池は慌てて言った。

「いや!そうじゃ無くて…他の方法ないかと思いまして…」

練習前だよ…もう良いよ…

帰ろ…そう思った。

リュウが言う。

「お前なんかに出来る事ないアルヨ。玉運んでナ!」

更に笑う。

そうだね…帰りましょ…

そう言おうとした時、リュウがハーネスの入った紙袋を小池から見えないように指さした。

笑いをおさめたリュウの目が、やらせろ!と言っていた。

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そんなまだるっこしい作戦みたいな事したって無理だよ…

怖がってんだから…

てかお前の作戦に乗りたくないんですけど…

だったら僕はもっとストレートに行く…

「怖いならやめた方が良いよ。怖がりは捕まるんだよ」

そう僕は小池に言った。

リュウが、通じなかったのか?と言う顔をする。

日本人を口にした、お前の、手の平で踊る訳にはいかない…

僕は更に小池に言った。

「やめるのは構わないけど、全部無しって訳には行かないよ。パチンコ台も練習用に揃えたし、裏ロムも仕入れちゃったし…」

小池の顔が不安に歪む。

「金は欲しいんだろ?」

「はい…」

少しうつむいて、小池は答えた。

「じゃあ… 取り付けは全部、僕がやるから、パチンコ台の鍵だけ開けてくれよ。開けたらどっか行って良いから」

こうして勢いだけで僕が取り付ける事になった。

危ないだろ…

なに言ったの… 僕?

ホテルからの帰り道、車の助手席でリュウが笑いながら言う。

「出来るアルカよ?」

知るか!

どう考えても小池にハーネスの取り付けを練習させた方が安全で楽であった。

失敗した…後悔がよぎる。

しかし怖がる小池とはどうしても組たくなかった。

リュウはあの一瞬、小池に練習させればハーネスなら上手く行くと判断した。

僕は小池には無理だと判断した。

その違いだけである。

「出来るだろ。意外と簡単そうだし」

助手席を少し倒し気味にしているリュウが、僕の横顔を見ながら言った。

「ふ~ん… だったら俺も手伝うアルヨ」

お前…マジウザい!

裏ロムでは無く、ハーネスを取り付ける事に決まって、少し考えてしまった。

変造カードの打ち込みの事である。

ハーネスの取り付け自体はそれほど難しくは無いと思った。

テレビ等で、一台のパチンコ台を、2、3人のゴト師で取り囲んでホールの営業中に何かを取り付けているのを見た事はあった。

あれではダメだと思った。

彼らは長くやろうとはしていない。

バレなきゃラッキーぐらいの積もりで取り付けているのであろう。

何かを取り付けた台を、人に売る積もりなのだろうか?

それとも、短期間に一気に出す?

どちらにしても僕とは状況が違った。

バレたら儲けの大きい変造カードゴトが終わる…

方法をいくつか考えて、これで良いやと適当に決めた。

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