組織犯罪の始まり1

人数は10人ぐらい居て、日本人と外国の人が半々程だと言った。

歯抜けの話しを聞いた時、雪ちゃんの所の奴が使えるなと思っていた。

「打ち子仕事だから日当だけど、どう?」

そう雪ちゃんに聞くと喜んでいる。

捕まる可能性が少ない安全なゴトだと、取り分が安い【打ち子】になるのは、この世界の常識であった。

ホールと話しを付けて打つとは言っても、やはり打ち子は日本人が良い。

東洋系の外国の人は見た目は日本人に見えるのだが、やはりどこか違う。

普段見逃している店でも外国の人は嫌われて捕まったり追い出されたりしていた。

【犬と〇国人お断り】と入口に書いてある店さえあった。

変造カードの初期の頃に言葉が通じない為、疑われただけで暴れたり派手な玉抜きをしたりした〇国人が沢山いた結果である。

のちに僕は、店側と話しを付けてゴトをした。

その時、〇国の友達に頼まれて、全く日本語の喋れない〇国人を打ち子に入れた事がある。

絶対に捕まる事の無い打ち子であった。

この打ち子になった人はバカだったのか臆病だったのか知らないが、ジュースのサービスに来た店員に「なんのジュースが良いですか?」と聞かれ突然殴り掛かった。

後で聞いたら「捕まりそうだったアルヨ!」と言っていた。

臆病じゃない…

バカなんだ!

ただ、捕まると強制送還で国に帰らされるので、日本人より無茶をしたり臆病だったのは確かである。

強制送還を嫌がる理由はいくつもあるが、一つだけ書いておく。

蛇頭(ジャトウ)と言うのを聞いた事はないだろうか?

多分あると思うが僕の知ってる範囲で説明しときます。
間違っている可能性は大なので参考までに。 
〇国の人に聞いただけで確認はしていません。 

この組織は日本への密入国を扱う組織である。

イメージ的には日本のヤクザ組織をイメージするが、この当時は少し違う。

元々自然派生的に出来た団体で、貧しい〇国の人達の味方であった。

日本に密入国してでも海を渡らなければ、食べて行けない〇国の人を、密入国させる漁師達の集団であった。

味方とは言えお金は取る。

捕まれば重い刑罰に合うからである。

なのでお金さえちゃんと払えば別段危ない集団では無かったのである。

それが受け入れる日本側のヤ◯ザ達などと組む事によって、少しづつ乱暴な組織になっていったのである。


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支払わせる金額もどんどん上がっていった。

僕の知っている〇国の人達も何人かはこの集団にお世話になって日本に来た。

乱暴では無かったらしいが料金はすこぶる高かったそうである。

20人ぐらいの親族でお金を出し合い、一人だけを日本に送る事が出来たと言う。

とても〇国で働いていたのでは返せない借金をして密航したと言う。

それで尚、生きるか死ぬかのオンボロ船で日本に着く。

日本に着けなければ、返せない借金だけが残る。

日本の波打ち際で密入国船が拿捕されているのをテレビでたまに見るが、国に強制送還された後、死ぬしかない人達が沢山いるそうである。

だから彼等は、必死になるし臆病にもなる。

手段を選ばない犯罪すら犯す。

許される事では無いと思うが、僕にはそれを言う権利や資格は無い。

目糞、鼻糞だからである。

彼等が危ない理由などまだ余り知らないこの時…

雪ちゃんに聞いた。

「日本人で大人しく見える人、五人必要なんだけど居る?」

いるアルヨと言う事なので、歯抜けに次の日返事をした。

返事と言うよりも一方的な通告である。

○クザに喰われてたまるか!と思っていたので強気であった。

歯抜けは最初に、この話しを僕にした時、ツルッパ達と僕を同じ扱いにしようとしていた。

お断りです…

歯抜けには、この時弱みが沢山あった。

組に内緒でやる仕事なので人が居ない。

内緒だから時間も作れないので現地で監督も出来ない。

一番の理由は、僕とカードの取引をする前に付き合っていたカード工場と、完全に付き合いが切れていた。

僕の所が安かったので、前の工場と値段の事で交渉したらしい。

歯抜けは自分の先を、工場だと言っていたが、工場では無いと僕は思う。

歯抜けのその時のカードの仕入れ値段は1500円。

僕、500円。

完全に喰われてるやん!

ホールで実際にゴトをする人の定価だよ…

間に歯抜けを食い物にしている人が何人もいたのは確実だと思う。

その、間の人とカードの値段交渉を歯抜けはした。

間の人は、安くしたら自分の取り分が無くなるので当然断る。

歯抜けがしつこくするから携帯番号を変えられて連絡すら取れなくなっていた。

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