知らぬ間にゴト師18

良夫ちゃんに背中を叩かれた時、自分の判断ミスに気づいた。

ビビりながら聞いた。

「緊急?」

なぜか、呼んでますと言う。

「婆さん?」

「違います」

は?

他に誰が?

ま、まさか店員か?

コイツだけは分からない。

恐る恐る、誰が?と聞いたがモジモジしている。

余りホールの中で良夫ちゃんと口を聞いているのは好きではない。

「どこ?」

「そと」

アンタは単語しか喋れないのか?と思いながら席を立ち、正体の知れない何者かに向かい、僕は外に向かった。

ポケットには変造カードが入っている。

警察や、店員なら、僕捕まるじゃんと思いながら…

外に出たら駐車場の端っこの方に三人の男がいた。

遠間でもはっきり分かるおもいっきりなヤクザさんが…

目立つのが身長180ぐらいのツルッパゲ。

高級ブランドの変なジャージを着ている。

近づくほどに見えてくる。

隣のちびっ子は、キラキラ光るスーツを着てた。

真ん中の奴はマトモかなと思いながら更に近づくと、笑った顔に全く前歯が無い。

後で気づいたが指も三本無かった。

いまどきこんなかっこしたヤクザいるか?と思った。

違う意味で怖い…

真ん中の歯抜けが愛想良く言った。

「仕事中悪いね~ 少し話しできないかな~」

ツルッパゲが僕を睨んでいるのが、少しカチンと来た。

「良いですよ ちょっと打ってる奴片付けて来るから10分ぐらい待ってて… あそこのファミレスにいれば?」

そう言って、太い道路を挟んだ先にあるファミレスを指さした。

歯抜けが愛想よく言う。

「分かった。待ってる」 

後ろに付いて来ていた良夫ちゃんに事情を聞きながらホールへ戻る。

「なにあれ?」

少し恥ずかしそうな良夫ちゃん…

全然、可愛くないんですけど…

やはり前回このホールに来た時に問題があったと言う。

良夫ちゃんの近くで打っていたツルッパゲが、良夫ちゃんの事をジロジロしつこく見て来た。

後で分かった事だが良夫ちゃんの変造カードは下皿に置いてあった。

ツルッパゲで怖いし、疑われたと思った良夫ちゃんは席を移動した。

それでもツルッパゲはついて来る。


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二台ほど移動したがジロジロ見ながらやっぱりツルッパゲはついてくる。

そこで良夫ちゃんは疑いを晴らす為に三千円の本物のカードを券売機で二回買った。

するとツルッパゲはついて来なくなった。

その日はそれで何事も無く帰った。

疑いが晴れたと思っていたが、今日またツルッパゲに横に座られた。

また本物を買ってごまかす積もりで券売機にお金を入れようとしていたらツルッパゲが話し掛けて来た。

「話し出来ない?」

そう言われ怖くなったので僕の事を言った。

ツルッパゲに、その人呼んでよと言われ、良夫ちゃんは僕の背中を叩いた…

僕…

関係なくね?

なんで僕の事喋んの?

どうして、あんな田舎ヤクザみたいなのと、ファミレス行かなきゃならないの?

ここ東京だよ…

そうは思ったが仕方ない。

諦めてファミレスへ一人で向かう。

内心カード売れないかな?売れたら間抜けっぽいから高く売ったろと思っていた。

ファミレスに着くと三人が待っていた。

席に座る時に、ツルッパゲが、また僕を睨んでいる。

カチンときた。

「睨むなよ。おっかねえだろ!」

そうツルッパゲに言ってみた。

「すんません!」

なぜか、素直なツルッパゲ…

助かった。

その後は仲良く四人で話しをした。

聞くと、三人共変造カードを、このホールでやっていると言った。

自分達の仕入れているカードが高いので、たまたまホールで見つけた良夫ちゃんに、安くカードが入らないかを聞きたかったらしい。

きた! 鴨や!

ナイス、良夫ちゃん!

その上この鴨たちはネギも背負っていた。

しかし、この時はカードをいくらで仕入れているのかだけを聞かれた。

これが難しい。

三バカは間違い無く僕よりは高く買っているはずである。

余り高く言うと要らないと言われてしまう。

逆に安く言うと損をする。

この三バカは、自己紹介の時に、日本でも有数の大きな暴力団の名前を出した。

腐っても巨大組織の一員である。

そんなに高く買ってないだろ~ とは思う。

賭けに出た。

しかし言い方を変えた。

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